24泊目
「(聞こえてねぇよな?)」
「(大丈夫だと思うよ、出入口が騒がしくて助かったー)」
「ふえぐ、ふえ?」
まだ小声で喋っている二人を見ながらサラさんの影からサーシャちゃんと他の三人を見ると誰かを探してるのか、食堂を四人で見回していていた。
すると灰色の髪の少年がサーシャちゃんに話しかけると首をかしげながらサーシャちゃんが食堂から去っていく、それに続いて他の三人も出ていった。何だったんだろう?
それを見たサラさんとリースちゃんが私の口から手を退けて大きな溜め息を吐いた。何かげっそりしてる?
「ぷはー! どうしたの二人共?」
訪ねると可愛そうな人を見る目で見てきた。やめて! 何か泣きたくなる!
「知らないって罪よね......」
「そうだな、寿命が縮んだよ」
「???」
訳が分からなくて首を傾げるとサラさんが食堂の出入口を左肘をついたまま指差した。
「今のはスミカ様の娘のサーシャ様ってのは分かるな?」
「う、うん」
「側に居たのは『親衛隊』って言ってな、普通は学園内での武装は原則禁止されてんだ、魔術学園も同じだ、でも奴等だけは武装が許可されてる」
「な、なんで?」
「スミカ様の御息女よ? もし何かあったらこの学園、ううん。王国は終わりだわ」
「あの三人は武術学園でトップクラスで強い、しかも一切の手加減が無いんだよ、上級生に聞いたんだが去年の今ぐらいの時期にサーシャ様の陰口を言った奴が居たらしいんだ。そしたらあの親衛隊が血眼で元凶を炙り出して―――」
ごくりと生唾を飲み込んだ。
「二度と学園に来られないようにしちゃったのよ」
「えぇ!?」
「相手が大貴族だろうが何だろうがサーシャ様のに害を成すものは潰してるらしい、ちゃん付けで呼んでみろ、首が飛ぶぞ?」
「ひぃいい?! で、でも流石に流血沙汰は不味いんじゃ......?」
私がそう言うと、二人は首を横の降った。
「背が高くて、栗色の髪の毛の人が居たでしょ?」
「うん」
あのロングソードを腰に着けてた人だね。
「あの方は王国軍隊の最高責任者、軍務大臣様の娘なのよ。だから公爵家でも逆らえないわ」
「ええ!?」
「まぁ、そんな馬鹿げた事をする公爵家なんて居ねぇだろうけどな」
食器をトレイに綺麗に並べてからサラさんがそれを持って立ち上がった。リースちゃんもトレイを持って立ち上がる。それを見て私も急いで食べかけの『かつさんど』を口に詰め込んで、よく噛んでから飲み込む。
お弁当箱を包み直してから鞄に突っ込んでから二人の後を着いていった。二人が食器を返却口に置いてから一緒に食堂を出た。廊下を歩いているときにふと思い出した。
「そう言えば狼族? の二人が居たけど。あの二人も偉い人の子供なの?」
「あー......あの二人ね、生まれは知らないけど」
「あの二人か......」
ん? 何か二人が苦い顔してる?
「ジルヴィア兄妹、通称『血塗れ兄妹』」
「ち、血塗れってなに?!」
「兄のジョシュはまだ話が通じるわね......一回だけ話した事あるけど、常識人だったわ。問題は妹の方よ」
リースちゃんが溜め息を吐きながら眼鏡の位置を直す。髪を両側で縛ってて何か物凄く大きな白い包みを背負ってた子だよね? 可愛い子だったけど。するとサラさんが前髪をかき上げながら眉を寄せた。
「妹のユリスはマジでヤバい、遭遇する確率は低いと思うけど気を付けろよ」
遭遇って......魔物じゃないんだから、失礼だよ。あんなに可愛いのに。
「確か、授業でダンジョンに行った時にゴブリンを素手で引きちぎったそうよ」
「え......な、何を?」
「首を」
ひゅっと喉が鳴った。え? サーシャちゃんと同じ背丈だよね? オーガじゃないよね?
「あー聞いた事ある、真顔でネジ切ったりしてて、止めに入った兄貴にもゴブリンの血がかかったんだっけ?」
「そうそう、それで『血塗れ兄妹』って言われてるのよね」
「へ、へー......」
こっわ! ユリスちゃんこっわ!
「とにかく、『親衛隊』はヤバいって事だ。サーシャ様に出来るだけ近寄らない方がいい」
「う、うん」
何かサーシャちゃんがかわいそう、そう思いながら私達は午後の授業のために移動した。
―――――――――――――――
「へっくち!」
「......ユリス、風邪? 大丈夫?」
「大丈夫、鼻がムズムズしただけ」
「この時期は体調を崩しやすいですから気を付けて下さいね?」
「寝込むと高熱が出るからな、ユリスは」
「うん、気を付ける。兄様も鼻詰まり直して?」
「うっ......す、すまん」
「それにしてもサーシャ様のお探しの娘は居ませんでしたね」
「......匂いはしたんだけど」
「さっきも言いましたけど、もう教室に戻ったんじゃないですかね?」
「嗅いだことないから分からない、どうせ学園が終われば会える」
「噛みつくなよ?」
「酷い、兄様。ユリスをそこら辺の野良犬と一緒にしないで」
「そ、そうか?」
「舐めるだけにする」
「「いや、ダメだからな?! (駄目ですよ?!)」」
「......はぁ」




