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街かど宿屋のドラゴンさん  作者: 抹茶さめ
2話
77/93

姉の手

 

 水を浴びるたびに髪にこびり付いていた物が洗い落とされ、身体を伝って泉に溶け込む。赤く、自分の髪よりも紅い同族だった者の血。


「うっ......!」


 吐き気が込み上げてくる、命乞いをする者を殺した、禁忌を犯していない者まで殺した、首を飛ばし、腹を切り裂き、翼をもいでから殺す。未だに斬った感触が残る両手を見ると紅く、紅く染まって―――


「あああああああ!」


 悲鳴を上げながら私は自分の身体を抱きしめながら泉に浸かる、助けて、誰か助けてよ......


「助けてよ......姉様ぁ」


 右腕をぎゅっと掴む、大きく、消えることが無い古傷が刻まれた腕を掴む、姉様に刻み込まれた傷、姉様との絆。


 その時、何かが泉に入る音がした。敵?! 何で気づかなかった!? 隠密を得意とする奴?!


 濡れた顔を上げて直ぐに装備が纏まって置いてある場所まで泉の中を走ろうとした時、ポンと頭に手を置かれた、私はビクッと身体を震わせて、後ろを振り向こうと―――


「振り向かない」

「ッ!?」


 その声を聴いて心の臓腑が締め付けられるように胸が痛くなった。聴いた事がある声、数百年ぶりに聴いた懐かしい声。


「いい? 不意に近づかれた『龍人化』を解除してから反撃した方が早い、ドラゴンなんだから」

「......はい」

「それと、護衛をしっかり配置すること、長になったんなら自分の命を大切にしなさい」

「......はいっ」

「はぁ......泣きたい時は泣けばいいのに、龍帝でも泣いたって良いんだよ?」

「ッ!!」


 私は勢いよく振り返ってその人の胸に飛び込んだ。


「ねえざまあああああああああ!」

「うわ! 号泣しちゃった、はいはい、姉様ですよー」


 焦げ茶色の腰まである長い綺麗な髪、お父様と同じ黒い翼に黒い角、お母様譲りの紫色の紋様が綺麗な私の姉様。


「すみかねえざまああああああ!」


 私は姉様の服を掴みながら泣いた、顔を押しつけて泣いた。すると、姉様が優しく頭を撫でてくれた。


「泣き虫になっちゃったねーカスミ」


 それから数分、私は泣き続けた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――



「あらら、泣き疲れて寝ちゃったか、よいしょっと」


 私は小さな寝息を立てているカスミをお姫様だっこして泉から出て、タオルで身体を拭いてから着替えさせて近くの木に寄りかからせた。


「これで良しっと......居るんだろ?」


 茂みに向かって言うと地面を踏みならしながら一匹の大きな黒いドラゴンが木をなぎ倒しながら現れた。その顔には大きな傷が付いていた。


『ようやく寝たか、寝ろと言っても寝なかったのだがな』

「っち、そんなんで寝られるわけ無いじゃん」

『ククク、相変わらずだな、スミカよ』

「お前もな」

『それで? 何故お前がここに居る? まさか一族に戻る―――』

「どの口が言うの? ここに来たのはカスミの為だよ。どれだけ負担をかけるつもり?」

『我とてかけたくは無い、だが龍帝なのだこの子は、お前が継ぐはずだった『御使い』をこの子が継いだのだ』

「共食いを防げない時点でこの子には無理だよ、アンタがもう一度龍帝になれば全部解決するんでしょ?」


 そう言うと、漆黒のドラゴンが頭を横に振った。


『グウ......そうしようと我も思った。だが天命が下ったのだ』

「天命?」

『そうだ、我がもう一度龍帝になれば命は無いと言う、な』

「......それはカスミが死ぬって事?」

『それだけでは無い、この世界の全ての命だ』


 ギリッと噛みしめた奥歯が鳴る。


「......ディーネの時もそうだけど、ホント腹が立つ奴等だよ」

『何だと?』


 ぽつりと呟いた声に、漆黒のドラゴンが反応した。


「何でも無い、取り合えずコレを」


 アイテムボックスを開いて黒い液体の入ったガラス瓶を取り出す。


『何だそれは?』

「共食いを抑制する薬、カスミの手をこれ以上汚さないようにしたいから。薄めれば全員分はあるんじゃ無いかな?」

『そうか、助かる』


 そう言いながら器用にに前足の爪で私が差し出した瓶を掴んでアイテムボックスにしまう。それを見てから私は漆黒のドラゴンに背を向けた。


『行くのか?』

「行くよ、仕込みしなきゃいけないし、新しい子も増えたから教えることが多いんだよ」

『ククク、いつしかお前の店に行ってみたいものだ」

「来たらぶっ殺す、『テレポーテーション』」


 一瞬にして宿の裏庭に飛んだ。懐中時計を取り出して時間を確認すると午後の四時、よーし仕込みしますかね。そう思いながら裏庭から出て酒場に向かって歩いて居ると物凄い勢いで宿の入り口が開けられる音がした。


「すううううううみいいいいいいかあああああああさあああああああんんんんん! どこですか-!! 私に話してないことあるでしょおおおおおおお!?」


 に、逃げようかな......




―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「......あ、あれ? 私寝てた?」


 目が覚めるといつの間にか私は泉の近くにある木の根元で寝ていた。そこでハッとして辺りを見回した。


「姉様! 姉様は何処に!?」

『どうした? 騒々しいぞカスミ』


 立ち上がると同時に父上の声が聞こえた。木々をなぎ倒しながら現れた父上が私を上から睨んできた。


「ち、父上! 今さっき誰かここに居ませんでしたか!?」

『何だと? 我は知らん、疲れが溜まって寝ているお前以外ここには誰も居なかったぞ? 寝ぼけたことを言っていないで帰るぞカスミ』

「は、はい」


 そう言われて、私は突き刺さった大きな剣を引き抜いて腰に引っかける、夢? 幻? 疲れてるのかな私? 地面を踏み鳴らしながら歩いて行く父上の後ろを付いていく、眠ったからなのか凄く身体が軽い、私は泉を振り返りながら首を傾げた。




 

この話を投稿するか悩みましたけど、どうでしたか? ちょっと早すぎたかな......

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