21泊目
「ティーナちゃん!」
「うっひゃあああ?!」
サーシャちゃんと分かれて自分の教室を目指して歩いて居たら名前を呼ばれながらいきなり後ろから胸を鷲掴みにされた。
「ちょ、ちょっと! や、やめ、くぅ! やめてよ、リースちゃん!」
「うへへ! 今日も良いもふもふと最高のお胸の感触ですな-!」
何とか脱出して鞄を持ったまま両手で胸を隠して振り返ると紫色のショートヘアーで緑色の瞳で、背丈は私ぐらいの女の子が両手をわきわきさせながらじりじりと近づいてきた。
「ぐへへ! 今日も良いからだし―――ぶへ!?」
リースちゃんの頭に分厚い本が落とされる。
「やめろって、嫌がってるだろ?」
「あ、サラさん」
「よ、おはよう」
赤い髪をサイドで纏めて縛っていて、魔術学園の制服を着崩した子が本で肩を叩きながら笑って挨拶してくれた。少しキツい眼光だけど入学初日であたふたしていた私を助けてくれた優しいサラさん、同じ精霊魔法使いのリースちゃんとは数日で友達になれた。というか、リースちゃんは私の尻尾が大好きみたいで街で見かけたときから狙ってましたって言われたんだっけ......狙ってたって何?
「リース、てめぇ。いい加減にそのおっさんみたいな事やめろよ?」
「断る!」
「駄目だこいつ」
両手を腰に当てて胸を張るリースちゃん。いや、本当にやめて? ビックリするから。
「途中入学してきて一週間、朝一番にいるはずのティナが居ねぇからさ、体調崩したかと思ったんだぞ?」
「あー、今日はちょっと寝坊しちゃって......」
「確か夜は働いてるんだっけ? 下宿先で」
「う、うん」
私が竜風亭、スミカさんの元で寝泊まりして働いているのは秘密にしてる、理由はサテラちゃんに言われたからなんだけどね。スミカさんって結構な有名人だから言わない方が身のためって言ってた。
「そんなに金ねぇのか? 私が貸してやろうか?」
「ふえ?! い、いらないです! 財布を開かないで! しまって!」
いつの間にか取り出した財布から金貨をつまみ上げて言うサラさんを必死に止めた。その時、教室に入る時間を告げる鐘が鳴った。
「うわ! やっば! サラ! ティナちゃん急ごう!」
「お前が変なことしなきゃ余裕だったんだぞ?!」
「あわわわ! 待ってよ二人とも-!」
私達三人が慌ただしく教室に入る、教室は扇形で段になっていて中央は大きな黒板と教卓が置かれていた。メフィア魔術学園の第一学年は途中入学した私を入れると二十三人でその中でも精霊魔法学と普通魔法っていう科目に分かれてる。サラちゃんは普通魔法を学んでるはずだったんだけど、飽きたとか、教師が気に入らないとかで私が入学する三日前に勝手に科目を変えたとか。
そんな事は普通出来ないんだけど、サラちゃんの実家が凄く偉い貴族様である程度の自由が効くんだって、本人は実家なんて嫌いだって言ってたけど。
適当に空いている場所に三人で座ると先生が教室に入ってくるのと同時だった。ガッシリとした体格で中年ぐらいのいかにも武術! って感じの男の先生なんだけど、実際はAランク冒険者の魔法使い、メフィア魔術学園で三番目くらいに魔法の扱いがうまくて、精霊魔法の基礎まで習得している凄い先生だとか。
「よーし、遅刻、欠席はゼロだな? 授業を始めるぞ。今日は基礎中の基礎、『level』と『スキル』についてだ、板書はしない。しっかり聴いて、書いて、そして覚えろ」
私は耳をピンっと伸ばしてからノートを広げてインク壺とペンを並べた。
「まず最初に『level』についてだ、これは誰しも知っていると思うが自分自身の『格』『位』を示すものだ。『level』を上げるには経験を積むしか無い、魔物を倒した、魔術書を読破した、魔法の扱いがうまくなった。他にも色々あるが大抵はそういう経験が蓄積して『level』が上がる。『level』を確認するにはギルドやこの学園にある『levelリーダー』と呼ばれる魔法石に触れれば自分の頭の中に情報が送り込まれてくる。そのため、他人に自分の『level』を知られる事は絶対にない」
へー『level』って言う単語は聴いた事あったけど確認の仕方がわからなかったんだよねー、勉強になる。
「だが何らかの理由によって、自分の『level』を他人に教えるのにはこれを使う」
先生がズボンのポケットから銀色の金属板を取り出した。何あれ?
「これは『ステータスカード』と呼ばれる代物だ。ギルドに行けば発行してもらえる物で、例えば魔法使いなら自分の使える魔法の種類、属性、その他『スキル』が全て書かれている、無くしても自分以外の者には見ることは出来んが再発行には金貨三十枚掛かるから気をつけろ、学園でも初回は無料で発行するからまだの奴は誰かに案内してもらえ」
先生の視線が私に飛んできた。あ、そういえば行ってないかも......すると、右隣にいたリースちゃんが肘をコツッと当ててきた。
「(今日の授業が全部終わったら一緒に行こうか、私もカード更新したいし)」
「(う、うん、ありがとう)」
小声で話しかけられたので私も小声で返すと今度は左肩を突かれてそっちを向くとサラさんがニッコリ笑っていた。
あー......つれて行けって事ですね。わかりました。
「よし、次は『スキル』についてだ」
まだ授業は終わってない。




