19泊目
「力強くない? 大丈夫?」
「ちょ、丁度いいです」
「よかった」
スミカさんに背中を洗って貰っている、液体の石鹸を更に泡立てる事が出来る布があるみたいでそれを使ってスミカさんが鼻歌混じりに私の背中を洗っていた。
その時、ぴとっと背中に指を当てられた。
「ひゃう!」
「あ、ごめんくすぐったかった?」
「は、はい......」
「ちょっと見せてもらっていい?」
「ど、どうぞ? 見ても面白くないと思いますけど......」
つーっと背中の傷を指で撫でられる、ぞわぞわするぅ......
「背中を切られるって言うのはね、背を向けて逃げてた所を襲われるか、誰かを庇って切られるかのどっちかなんだよ」
「え?」
「まー例外もあるけど、例えば多数を相手にしてて後ろから切られるとかね、はい、お湯かけるよー」
桶に貯められたお湯をスミカさんが背中にかけてくれた。
「見た感じかなりの深手、死んでてもおかしくない。手当てが良かったのかもね」
「そう、なんでしょうか? 私には全然その時の記憶がなくて......」
「ふーん......今は痛みとかある?」
「いいえ、たまに突っ張るような感覚はありますけど気にならないです。私も洗わせて下さい!」
「え? じゃあ、お願いしようかな」
スミカさんが布を手渡してくれた。液体の洗剤を布に染み込ませて少し揉んで泡をたてる、スミカさんが体を隠していたふかふかの『たおる』っていうらしい生地の布を外してから畳んで、濡れない位置に置いてから私に背を向けて木の椅子に座った。
あ、あれ? 羽がない?
「あ、あの。スミカさん、羽が......」
「ん? ああ、洗うのに邪魔だから消したの」
「消したって、そんな事出来るんですか?!」
「んー私と同じ種族なら出来るんじゃないかな? あ、髪どけるね」
艶々の長い髪の毛を右手を後ろに回して纏めてから前に移動させた。
「し、失礼します!」
「ほーい」
少し震える手で布をスミカさんの背中に押し当てて擦る、うわー綺麗な肌! すべすべだ。
「あー久しぶりに背中を洗って貰ってるなー」
「サーシャちゃんとは入らないんですか?」
「この時間まであの子は起きてないしねー大抵サテラと入るんだけど、今日はサテラが読みたい本があるからて部屋に篭ってるから」
「そうなんですねー」
あんまり力を込めずに丁寧に―――あれ?
「スミカさんって結構筋肉付いてます?」
「うん、鍛えてるから」
すべすべの肌に隠れて背中を擦る感触が少し硬い、女の人に言うのは失礼だけど筋肉質って言うのかな?
「宿屋は趣味でねーこの宿屋をやる前はかなりの無茶してたから」
「無茶、ですか? あ、お湯かけますね」
「ありがとう」
ざばーっとお湯をかけるとお礼を言ってスミカさんが立ち上がった。スミカさんって着痩せするのかな? 胸大きい......私と同じくらい?
するとバサッと翼が現れた。
「あの、聞きたいことが山ほどあるんですけど......」
「ん? 何々? 何でも聞いていいよ?」
ふわりと笑うスミカさん、ふと視線がスミカさんの唇をとらえてあの事を思い出して顔が熱くなって顔をそらした。
「え、えっと、スミカさんって東の国の出身なんですか? 東衣とか着こなしてますし」
「んや、どっちかっていうと北の方かな?」
湯船に向かいながらそういうスミカさんの後をついていって一緒にお湯に浸かった。
北の方って確かにリクア帝国っていう大きな国があったような?
「北ってリクア帝国がありますよね? そこから来たんですか?」
「あー、もっと北かな。帝国より北の方」
帝国より北? 村長が地理を教えてくれたからなんとなく覚えてるんだけど......確か『龍渓谷』とか言う一番危険な場所じゃなかったっけ?
「え、あ、あの。帝国より北の方って『龍渓谷』がある場所じゃ......?」
「おーよく勉強してるねー、そうだよ。私はそこの産まれだから」
「ふえ?」
龍渓谷の産まれ? 近くの産まれじゃなくて龍渓谷で産まれたってこと? 一匹で国が滅ぶって言われる程強いドラゴンが一杯居るって言う場所だよ?
「私、一応ドラゴンじゃん?」
「......はい?」
「あれ?」
コテッと首を傾げた私を見て、スミカさんも首を傾げた。




