17泊目
「......う」
目を開けたら見たことがある天上が見えた。もう夕方なのか夜なのかわからないけど、光る石が部屋の中を明るくしていた。ベッドに寝ていてふかふかの布団がかけられているのが分かった。
スミカさんを見たら急に意識が無くなっちゃったんだっけ......
「ん? おお、起きたか?」
霞む視界を動かそうとする、何か凄く体が重くて頭を動かすのもキツイ、何とか頭を動かすと椅子に座りながら大きな本を膝に置いたサテラちゃんが居た。
「......サテラ......ちゃん?」
「うむ、まだ寝ているがよいぞ? マナ枯渇の影響がひどいからのう、動くにも動けんじゃろう?」
「う、うん......」
返事をするとサテラちゃんが本を閉じて脇に抱えると身を乗り出して私のおでこに手を当ててきた。あー冷たくて気持ちいいかも。
「ぬ、熱が出たか......ちと待っておれ、スミカを呼んでくる」
手を離して部屋から出ていく足音と扉が開く音と閉まる音が聞こえた。マナ枯渇って何だっけ? ボーッとして思考出来ない。数分くらいでスミカさんがサテラちゃんと一緒にやって来た。
宿の制服にエプロン姿、忙しいはずの酒場から直接来てくれたみたい。
「起きられる? ティナちゃん」
「ちょっと......無理です。ボーッとして......」
「そっか、サテラ、アレ持ってきた?」
「持っては来たがのう、今飲ませたら確実に吐くぞ?」
サテラちゃんが濃い青色をした液体の入った長細いガラス瓶をポケットから出してスミカさんに手渡した。
それを受け取ったスミカさんが私の寝ているベッドに腰を下ろして長細いガラス瓶を私に見せて来た。
「飲めそう?」
「うっ......む、無理です、ごめんなさい」
吐き気が込み上げてきて口に手を当てようと思ったけど、全然体が言うことをきかない。
「むー......仕方ないか。ティナちゃん、少し嫌かもしれないけど我慢してね?」
「え?」
キュポっと栓を外したスミカさんがそのままガラス瓶に口を付けて少し口に含んで、横髪を右手で押さえながら顔を近づけ......え! ちょ! 近い近い! ちか―――。
「んむぅ!?」
私の唇にスミカさんの唇が触れたかと思うと、スミカさんの舌が私の口をこじ開けた。口付けされてる! キスされてる! ちゅーされてる!
口の中に侵入してきたスミカさんの舌は私の舌を捩じ伏せた。
え、苦ッ!
それと同時にあの液体が流し込まれてそれを飲み込んだ。あ、まつ毛長いんだ、スミカさんって......
そう思っているとスミカさんが口を離す。部屋の灯りをキラキラと反射する糸が私とスミカさんの唇から伸びて直ぐに切れた。
「これでよしっと、今飲んで貰ったのはちょっと濃いマナポーションだから、少しすれば熱も下がるし、動けるようになると思うよから」
「は、はい......」
「あれ? 顔が赤い? 熱が上がった?」
「だいひょうぶです!」
「そ、そう? なら私は酒場に戻るから、何かあったらサテラに言ってね? じゃあ頼んだよサテラ」
「くふふ、任せるがよい」
私を見ながらニヤニヤと笑うサテラちゃんが返事するとスミカさんは部屋から出ていった。
「で? どうじゃった? くふふ」
「な、何が?」
「決まっておろう? スミカの唇の感触とキスの味じゃよ、くふふ。濃厚なキスじゃったのう」
「ぶっ!?」
顔をそらしながら吹き出した。
「な!? な?! な! 何言ってるの!? あ、あれは治療! そう! 治療だよ!」
布団をはね除けながら私は体を起こした。かーっと顔が熱くなるのが分かる。うう......思い出しちゃった。
「くふふ、もしかして『初めて』じゃたのか?」
「女の人同士だよ?! ノーカウントだよ!」
「柔らかくていい匂いがしたじゃろ? スミカは」
「うん、柔らかくて、いい匂いが―――じゃなくて!」
サテラちゃんが物凄くニヤニヤしてる! なんなの?!
「さて、起きられるようになったようじゃしのう、何か軽く食べられる物を持ってくるかのう」
「あ......」
あれ? あんなに怠かったのが嘘みたいに直ってる? 首を傾げているとサテラちゃんが部屋から出て行っちゃった。あ、服も替わってる......なんか迷惑しかかけてないような気が―――
カリカリカリ......
「ん? なんの音―――ひぃ!?」
音がする扉の方を見ると隙間から金色の瞳が覗いていて、隙間から差し入れられた手が爪で扉を引っ掻いていた。
「......この、泥棒キツネ」
そうボソッと呟いてサーシャちゃんがすぅっと居なくなった。
「え? ちょっと待って! 見てたの?! アレ見てたの!? 違うの! 誤解! 誤解だから! サーシャちゃああああん!?」
起き上がれたけどまだ足に力が入らなくて、手を伸ばしてサーシャちゃんを呼ぶことしか出来なかった。




