合否
数年ぶりに見た憧れの人はどこも変わっていなかった。
「す、スミカ様! お久しぶ―――」
「よいしょっと」
声をかけようとしたら、スミカ様はさっきまで戦っていたキツネ族の女の子を横抱きした。
「サーシャ」
「にゃ、にゃい!?」
「おいで」
「......は、はい」
冷たい声にサーシャが飛び上がってから返事をして一目散にスミカ様の元に走ってきて背筋を真っ直ぐに伸ばして立ち止まった。
「どうしてこうなったの?」
「......にゅ、入学の手続きに来て―――」
ふるふると震えながら今までの出来事を話していた。私が勝負を挑んでキツネ族の女の子、ティナさんに容赦なく攻撃した事とかを嘘偽りなく。話終えたサーシャから視線を外して真っ直ぐに私を見てきたスミカ様。
「ふーん......ノエちゃん」
「ひゃい!?」
「ティナちゃんと戦ってみてどうだった?」
「え、えっと......精霊魔法にはびっくりしました。身体能力もずば抜けて高かったです、攻撃の殆どを避けられてしまいました」
普通は回避不可能の設置魔法を見事に回避されたときはびっくりしたし、サラマンダーを呼び出された時は冷や汗が出た。
「そっか、ノエちゃんに『マナポーション』を使わせる位だもんね、結構いい勝負してたのかー」
「ッ!」
スミカ様がスーっと目を細めて見てきたのでつい顔をそらしてしまいました。
「学園長、それに先生方? どうでしょうか? ウチの子は合格でしょうか?」
「も、文句のつけようがありません!」
「貴重な精霊魔法使いを教えられるのは名誉でございます!」
「優秀な生徒が増えるのは喜ばしい事です!」
みんな真っ青な顔で声を振り絞っていた。今、『ウチの子』って言った? スミカ様が家族と認めた存在?! そんな子に私は変な嫉妬をして勝負を挑んで、さらには傷だらけにした?!
きゅっと両手でスカートを掴む、どうしよう......絶対に幻滅された、駄目な女王様って思われた......
「満場一致でティナ様を我がメフィア魔術学園の入学を認めます!」
「そうですか、ありがとうございます」
学園長が滝のような汗を流しながら言うと、スミカ様がそっけなく礼を言ってから私の所まで歩いてきて立ち止まった。ティナさんを横抱きしながら見下ろされる。
恐る恐る顔を上げるとスミカ様は笑顔だった。
「そういえば十四歳になったんだっけ? おめでとう、誕生日パーティーには行けなかったし、今ここで言うのもあれだけどさ、聞いた限りじゃ魔法も上達してるし、女王としても頑張ってる。でも、ストレス発散も程々にね?」
「は、はい!」
私が元気よく返事をすると満足したのか、ふわりと笑って背を向けた。
「よし、じゃー帰るよ。サーシャ、おいでー」
「......ん!」
サーシャが短く返事をしてスミカ様の服の端を摘まんだ。
「あ、そうそう。ノエちゃん」
「はい?」
「今年のメフィア祭、慢心してると痛い目に遭うよ?」
「え? そ、それはどういう―――」
「じゃ、またね『テレポーテーション』」
「あ!」
聞こうと思ったら次元移動系の魔法で一瞬にして消えてしまった。
『メフィア祭』、魔術学園と武術学園で合同で行われる一年に一度の闘技大会、魔法、武術の優れた者上位十名が両方の学園から選出されて戦う。優勝すれば二年間学費免除、賞金も出る大会。
勿論私も出場経験がある、サーシャに負けて二位だったけど......
「痛い目って......どういう事ですか?」
「陛下ー! お仕事の時間でございますー! 陛下ー!」
クリスが走ってきた。ま、いいや。仕事仕事!
私はローブを翻しながら歩きだして、クリスと合流してから演習場を出た。
「い、胃が痛い......」
「「「同じく......」」」
お腹を押さえなが青い顔をしている学園長と先生達を残して。




