15泊目
「うう......どうしてこんなことに」
演習場の控室で私は椅子に座って項垂れていた。女王様に失礼な言葉遣いしちゃった......それにしても本当に小さな子だったなー。
ボーっと天井を眺めていると、サーシャちゃんがひょっこり現れて私の視界に入った。
「......率直に言う、ノエは強い」
「うん、学園長さんに聞いた。雷属性魔法を使わせたら天才だって」
「......勝てるの?」
「うーん......頑張ってみる」
「......そう」
そうは言ったけど、正直勝てる気がしない......私より一つ下の十四歳、『高速詠唱』と『多数展開』も習得済み、扱いやすいけど威力が低い雷属性魔法だけど女王様が使えば炎属性魔法並の威力だとか。
当たったら痛いじゃすまないね。死ぬ、絶対死ぬ。
「......時間、行く」
「あ、うん」
椅子から立ち上がりサーシャちゃんの後ろについていって演習場に入った。大きく縦に長くて丸い演習場で私達の正面には既に女王様と少し歳をとった人間の男の人がいた。
「サーシャ様、ティナ様、この度は殿下が失礼致しました」
そう言って男の人が頭を下げた。
「ちょっとクリス? まるで私が失礼みたいじゃない」
「みたい、ではなく。実際に失礼でございます。ちょっと目を離した隙に面倒事を作るのですか?」
「ぐぬぬ......」
「国の頂点に立つ者の自覚を持ってください」
「ふん」
女王様は鼻を鳴らしてそっぽを向いた。子供みたい......
「はぁ、見ての通り。殿下はわがままで自分が決めたことを曲げない御方です。この試合も止めたのですが無理でした」
「......知ってる、ノエはそう言う子」
サーシャちゃんがそう言うと苦笑しながらクリスさんが肩をすくめた。そして直ぐに真剣な表情になった。
「ではルールを説明させていただきます。相手を殺すような殺傷力が高い魔法は禁止、ダウンした場合十秒数えます。その間に起きられなければ負けに御座います。今回はティナ様が殿下に有効打を与えれば勝ちです。殿下はノックダウンを取ればそこで勝ちで御座います。何か質問はありますか?」
「ないわ」
「あ、ありません!」
「では、初めてください」
「......頑張ってね、二人とも」
クリスさんとサーシャちゃんが揃って場外に歩いていく方を見ていると学園長と白いローブを着た男女数人が居た。先生達かな?
「本当、度胸がいいのね? 勝負が始まっているのに余所見だなんて」
「え、あ! すみません!」
「まーいいわ。胸部装甲の大きさの違いが、戦力の決定的な差でないということを教えてあげるわ!」
ビシッと私の胸に指差して言う女王様、いやいや、胸部装甲って何よ? というかまだ十四歳なんだから成長の余地はあるよ? 私は十四歳くらいから大きくなったから全然きにする事じゃ―――
「っく! 毎日牛乳飲んでるのに大きくならないんだもん!」
あ、声に出して言ってた。
「もう許さないわ! 泣いて謝っても絶対に許さない! 『我が命ずるは天を貫く柱なり、その雷鳴をもって穿つ槍なり』! 『ライトニングスピア』!」
うわ! 詠唱早い!
雷で出来た槍が現れて私を貫こうと迫ってきた。それをぎりぎりで避ける。
「あぶひゃい!」
変な声出ちゃった......
ズドン!っと避けた槍が後ろで土煙を上げながら着弾したのが聞こえて恐る恐る振り替えると、観客席を守っている分厚い石の壁が黒く焼け焦げて煙をあげていた。
ぶわっと冷や汗が吹き出た。え、あの。威力がおかしいよ? 『ライトニングスピア』って初級魔法だよね?
「反撃してこないのかしら? ならどんどん行かせてもらうわ『我が命ずるは天を貫く柱なり、その雷鳴をもって穿つ槍なり、複数の雷鳴を轟かせろ』、『ライトニングスピアーズ』!」
「ッ!?」
げっ! やばい!
私は走り出した。女王様を中心に側面に回り込むように走り出す。六本の雷の槍が私の後ろで低い音を鳴らしながら地面を抉っている音が聞こえた。うひゃー! 怖いいい!
すると目の前の地面に青白く光る魔方陣が現れた。
「くっ!」
私は歯を食い縛って急停止してバックステップをして飛び上がってから空中で一回転すると魔方陣から波打つ透明な槍が突き出しているのが見えた。水属性魔法?!
出来るだけ衝撃がないように着地すると女王様が残念そうな顔をしていた。
「惜しかったわ、不意を付いたのだけどね。それにしても凄い身体能力と動体視力だわ」
「に、二属性使えるのですか?!」
「あら? 言ってなかったかしら? そうよ」
「聞いてないです!」
くぅ、詠唱が早すぎて避けるのが精一杯だよ。何とか隙をつかなきゃ。
「それにしても貴女、魔法使いなんでしょう? 何の属性を使うか知らないけど避けてばかりね? 詠唱が苦手なのかしら? なら待っていてあげてもいいわよ? あっははははは!」
イラ......
「あらそうですか? それはありがとうございます!」
私は右手を前に突き出し目をつぶった。大丈夫、村長と練習した通りにやればいいんだもん。
「『私の願いに答えたまえ 空よ 大地よ 世界に満ち満ちている精霊達よ 私に力を 精霊の加護を 私に炎の力を それは何人たりとも近寄れぬ 炎を統べ 操る精霊よ 力をかして』!」
「え?! その詠唱って!」
今更気付いても遅いよ!
カッと目を見開いて名前を呼ぶ。
「おいで! 『サラマンダー』!」
女王様と私との間に炎の渦が巻き起こり、天高く渦巻く、熱風が晴れるとそこには炎を纏った大きなトカゲが居た。女王様をジッと見つめながら唸っていた。
「反撃開始だよ!」




