13泊目
「......よそ見してるとはぐれる」
「あ、ごめん」
朝ごはんを食べ終えて。私とサーシャちゃんはメフィア魔術学園を目指して活気がある市場を歩いていた。色々な物が売ってるなー。
「......買い出しも頼むかもしれない、教えとく、ここが市場、大抵の物はそろう」
「へー! こんなに大きな市場なんて見たことないよ!」
「......エメル公国には無いの?」
「あるにはあるけど。私って、森の中にある村の出身で買い出しも数えるぐらいしか行ったことないんだー。でも、見た感じはエメル公国の王都にある市場の倍は大きいよ?」
「......そう、お師匠は普通って言ってたから世界中こんな感じかと思った」
エメル公国の市場も大きと言えば大きい、でも活気がない。お父さんに連れられて買い物に行ったけど、お店の人は皆表情が雲ってたのを覚えてる。何でかはわからなかったけど。
そう言えば、昨日から気になってたんだけど。何でサーシャちゃんはスミカさんの事を『お師匠』って呼んでるんだろう? たまにお母さんって呼びそうになって直してるけど。
「ねね、サーシャちゃん」
「......なに?」
前を歩いていたサーシャちゃんに話しかけると猫耳がピクッと反応して顔は向けずに返事をしてくれた。
「気になってたんだけど、何でスミカさんの事を『お師匠』って呼んでるの?」
「......私は剣士、お師匠は剣のお師匠だからお師匠」
「え? スミカさんって剣士なの?!」
「......ん、よく魔法使いって言われてる、魔法も凄いから間違ってないと思うけど。お師匠は『魔法剣士』って自称してる」
「そうなんだ、凄いなースミカさんのお弟子さんかー、何か羨ましい」
「......そう?」
「うん」
私の使う魔法は結構特殊で教えてくれたのは村長だけ、それも基礎だけだから私自身もよくわかってない、使い方は分かるんだけど威力がないって言うか、詠唱も時間かかっちゃうし。
「......ティナは剣士? 魔法使い?」
「え? うーん......魔法使い? かな?」
「......何で疑問系?」
「私もよくわからないんだ、だからメフィア魔術学園に行って学びたいの」
「......大丈夫なの?」
「え?」
サーシャちゃんが立ち止まって振り替えると私と視線がぶつかった。何か凄く心配してる表情なんだけど......
「......メフィア魔術学園も武術学園も入学するには実力試験がある」
「......え?」
「......私の時はA級冒険者と模擬戦をして、有効打を与えたら合格っていうのだった。魔術学園はわからないけど多分同じ」
「き、聞いてない!」
「......私が話しちゃったからあれだけど、普通は秘密」
それってお金だけ払っても実力がないと駄目って事じゃん!
「......行けば分かる」
「え、あ! ちょっと待ってよー!」
青くなっている私を置いて歩いていくサーシャを追いかけて走り出した時、黒い外套を着ている人とぶつかっちゃった。
「あ! ごめんなさい! 待ってよー! サーシャちゃんー!」
私は肩がぶつかる程度だったので軽く謝ってからサーシャちゃんを追いかけた。
街かどにある竜風亭からメフィア魔術学園まではそんなに遠くはなかった。巨大な門をくぐりるとサーシャちゃんが門番さんに『学園手帳』を見せてから用件を伝えると、人間の男の門番さんが慌てたように走って行った。
五分後、白いローブを身に纏った金髪の女性が息を切らしながら門番さんとやって来た。うわ、エルフ族だ! 初めて見た!
「けほ......こほ! が、学園長が、はぁはぁ、お、お会いになるそうです! ご、ご案内します」
「......大丈夫?」
「だ、大丈夫です! 少し運動不足なだけですから! どうぞこちらに!」
何か凄く気を使ってる? エルフ族って確か物凄く寿命が長くて、多種族は劣ってる!って思っているらしいから高圧的って聞いたんだけど、噂話だったのかな?
白いローブ姿のエルフさんに学園の中を案内された。魔術学園と武術学園は隣接して建てられていて、学園長は一人で二つの学園を管理、運営している方だとか。
そんな偉い人に会ってもいいのかな? しかも突然に押し掛けて。
「こちらです! では私はこれで!」
「......ありがとう」
「ありがとうございます!」
頭を下げて去っていくのを見送るとサーシャちゃんがいきなり学園長室の扉を開けようとした。
「ちょ、ちょっと! いきなり開けちゃダメだって!」
だけど私の制止を軽く無視しててサーシャちゃんが扉を開けた。
「......連れてきた」
「二分遅れですか、珍しいですね?」
「......説明してたら遅れた」
「そうですか」
広い部屋の正面にある机に座りなが両手を組んでいるエルフ族の男性。細い目付きに尖った長い耳、黒いローブ羽織っていた。
「まぁいいでしょう、あのお人からの頼みです。どうぞこちらに、ティナ・サンシェットさん」
「っ!?」
久しぶりにフルネームで呼ばれた?!
―――――――――時は少し戻り 市場
「あ! ごめんなさい! 待ってよー! サーシャちゃんー!」
ぶつかってきたキツネ族の少女が謝ってから走っていった、薄い桃色の髪、それと同じ毛色。
「みーつけたー」
依頼通りの容姿、間違いなーい
でも、薄い桃色じゃなくてサクラ色じゃん。一日目で見つかるなんてラッキー
「でもめんどくさいから後でいいやーどうせこの国からは出ないだろうしねー、ふぁああ......徹夜で来ると眠くてやだ、何処かで休もうっとー」
アインス王国に来るのなんて何年ぶりかなー? 出来ればあの人に会わずに仕事を終わらせなきゃ。
ボクは背中には背負ったモノをぐるぐる巻きにしてある黒い布をはためかせながら街を散策する事にした。大丈夫、臭いは覚えたし。
あんな可愛い子が大罪人だなんて世も末ですねー。




