12泊目
お日様の光が顔に当たってるのが分かる、あーもう朝かぁ、起きたくないなー、もう一時間だけ......すぅー
「......いつまで寝てるの? さっさと起きる」
サーシャちゃんの声が聞こえ―――
「はぴゅ!?」
バシっと頭を叩かれて私は飛び起きた。え!? な、なに?! 何事?! 寝ぼけ眼で部屋を見回すと、眠たそうな目で私を見ながら両手を腰に当てたサーシャちゃんが居た。あれ? 宿の制服じゃない?
「......お母さ―――違った。お師匠から話は聞いた、着替えたら行く」
「ふえ? い、行くってどこに?」
「......学園、入学の手続きしてこいってお師匠に言われた」
「入学? あ、ああ!入学手続き!」
寝起きでボーッとしていた頭が働き出してようやく理解出来たでも今日って確か......
「今日ってお休みの日でしょ?」
「......土の曜日とお日様の曜日は休みだけど、多分大丈夫」
「多分って―――」
その時、部屋の扉がノックされ、宿の制服姿のスミカさんが入ってきた。左手に綺麗に折り畳まれた私の服を持て。
「サーシャー、ティナちゃん起きたー? あ、起きてる。おはよう、ティナちゃん」
「お、おはようございます!」
「......寝てたから起こした」
「そっかーえらいぞー」
「......ん」
微笑みながらサーシャちゃんの頭を撫でるスミカさん、起こしたって言うか叩き起こされたんですけど?! っとは言えない......
「あ、そうだった。コレ、ティナちゃんの服とか下着ね洗って干しておいたんだけど、所々ボロボロだったから直しといたよ」
「え! そんな事までしなくてもいいのに......」
「ふふふ、明日からしっかり働いて貰うし、この宿で働くって事は家族みたいなものだしね助け合わなきゃ」
ニッコリと笑うスミカさん、眩しい! 笑顔が眩しいよ! と思っていると、スミカさんが開けた出入口にサテラちゃんが現れた。薄い寝間着を着ていて、眠そうに目を擦っていた。
「ふわぁあ......スミカー、ご飯食べたからお皿は水に浸けといたよー」
「ん? あー、ありがとう。歯磨きした?」
「したー」
「トイレ行った?」
「いったー」
「はい、良くできました」
「おやすみなさいのちゅー」
サテラちゃんはそう言いながらスミカさんの腰にぽすっと抱きついた。え、なにあの可愛い子。スミカさんが私の服を持ちながらサテラちゃんと向かい合わせになる。腰を下ろしてサテラちゃんの前髪を右手で優しく上げると、おでこに小さく口付けした。
するとサテラちゃんは満足したのかはにかんだように笑った。
「んふふ、スミカ大好きー」
「はいはい、もう寝なさい」
「あいー」
眠そうに返事をするとサテラちゃんは部屋から出ていった。本当に同じ人? 双子の妹とかじゃないよね!? 私は隣に居たサーシャちゃんに尋ねる。
「ねえ、あれって、本当にサテラちゃん?」
「......残念ながら」
「残念って......」
「あはは、やっぱりそう思うよね。サテラは夜起きた時とか朝寝る時は大抵あんな感じで、素直だし、可愛いんだけど」
「朝寝る? あーヴァンパイアですもんね、昼夜が逆なんですね?」
「そうそう。はい、どうぞ」
スミカさんが差し出した私の服を受け取る、直したって言ってたけど何か新品みたいになってる?!
「朝ごはん出来てるから酒場に来てね」
「......着替えてから来て」
そう言って二人は出ていった。何から何まですみません......服を両手で抱いて閉められた扉に小さく頭を下げた。よし、仕度しようっと。
備え付けの洗面所に行くと正面に鏡が付いていた。うわ、寝癖ひどい! あ、やっぱり髪の色変わってる? 昨日は鏡なんて見る暇無かったからなー。
桃色だった髪と耳は薄いサクラ色になっていた。サクラって言うのはエメル公国内で春に咲く綺麗な木の花で、遥か東にある国の物だとか。『サクラ』って言う名前は勇者様が付けたらしく、『英雄の木』とか呼ばれてるけどみんな『サクラ』って呼ぶ。
何で髪の色と毛色が変わったんだろう? あの石鹸のせいかな? それとも色がくすむくらい汚かった? それは嫌だなぁ......
自分で考えといてへこんだ。ま、いっか。サクラは大好きだからね。私は櫛で髪をとかし、顔を洗ってから歯を磨いて、着ていた東衣を脱いで綺麗に折り畳んでから私服に着替えた。
茶色い生地の何処にでもある上着とスカート、んー服とか買いたいなー、入学手続き終わったらお店とか見に行っていいか聞いてみようっと。
身だしなみを整えてから私は銀色の鍵を持って部屋を出た。




