老人の話
裏庭を出ていくまで何度も頭を下げるティナちゃんに苦笑いしながら手を振って見送る、今度はしっかりと扉を閉めて鍵を掛けてから煙管をくわえて、月明かりに照らされていない物陰に目を細めて視線をぶつけた。
「話の続きをしようか?」
「そういたしましょう」
老人のような声で全身を黒で統一した服を身に纏っている腰の曲がった男、背中には赤茶色の翼が生えている。顔も黒い布で隠していた。
その男が暗闇から浮かび上がるように現れた。
「見ての通り、新しい子も入るから私は忙しいんだ。厄介事はやめてね」
「重々承知しております。しかしながら我が一族、全同族の近況は報告させていただきます。姫」
「ふぅ......もう姫じゃないって、やめてよね爺や」
「縁を切り、同族を殺した事実は変わりませぬ。それでも姫を慕っている者は今も多くおります」
「あっそう、それで? 私の前に現れた理由は? 下らない事だったら爺やでも容赦しないよ?」
「ほっほっほ、怖や怖や......実はですな。ここ数十年、同族から禁忌を侵す者が後を絶ちませぬ、現龍帝、先代様が動いていらっしゃいますが、既に手遅れ、後手に回っております」
「禁忌?」
「はい、聞いたことはございませぬか? 『同族を喰らうてはならぬ、喰らえば邪にみいられる』っと」
「邪にみいられる、つまり邪竜になった。あるいは邪竜になりかけてるアホが居るってこと?」
「はい、そうなります」
煙管をくわえて煙を吸って口の中で転がして吐き出す。
「それと私に何か関係が?」
「今のところは御座いませぬ、ですが何時なんどき、邪竜となった者達が襲いに来るか分かりませぬ、今日はその警告に来た。ただそれだけで御座います」
頭を下げる老人に私は背を向けた。
「警戒はするしこの国にには一切手出しはさせない、だけど外で起こってる事はそっちで解決して」
「はい、分かっております。では今宵はこれにて」
夜に溶け込むように老人の気配が消えた。私また煙を夜空に向かって吐き出した。
「はぁ......なーにやってんだか、あの子が可哀想だよ」
そう呟いてから煙管を灰皿に軽く叩き付けて中の燃えかすを捨ててから『アイテムボックス』にしまって自分の部屋に戻った。




