王家の血
エメル公国内にある深い森の中に隠れ住むように、ある一つの部族がいるハズだった。
「くっそ! どこも空き家だ!」
「床も調べろ! 隠し通路があるかもしれねぇ!」
「チッ! 流石、王家に仕えてる奴等だ、察しがいい。おい! そこの小屋は調べたか!?」
「まだです!」
簡易拠点で建てたテントの外から仲間たちの声が聴こえてきた。俺は椅子に座りながら葉巻に火を付けて二、三回吹かしてから煙を吸い込み、鼻から煙を出す。いい香りだ。
そして机と俺を取り囲む部下達が地図を見ながら唸っていた。
「いくらなんでも逃げ足が速すぎる、まるで俺達が王家転覆を狙っていたのを知っていたかのようだ」
「代々、公国の暗闇の部分。暗殺と諜報に長ける部族だ。知っていてもおかしくはない」
「それに、今回の作戦だって情報が漏れてなければドロドロの内戦にならなかったはずだ」
「貴様、自分たちの仲間を疑っているのか!?」
「そうは言っていない!」
俺は酒の入ったグラスを煽ってからダンっと机に置くと部下達六人が肩を震わせた。俺は机に左肘をついて、左目を覆っている眼帯を左手の人差し指で二回叩いてから口を開いた。
「今はそんな事どうでもいい、これ以上調べても何も出て来やしねぇ。王都と王城の守備を崩そうと今も俺達の仲間は戦ってるんだ。くだらねぇ事で騒ぐな」
「ですが指揮官―――ッ!」
何か言おうとした部下の眉間に投擲様の小さなナイフを突きつけた。
「うるせって言ってんだよ、頭の中身ぶちまけてぇなら俺がやってやるぞ?」
「す、すみません!」
「わかりゃ良いんだ、こんな事で優秀な部下を失いたくねぇからな」
俺は椅子から立ち上がる、黒い防具が擦れる音がした。葉巻を加えたまま地図を凝視する。
「俺のミスだ、あの時確実に殺しておけば良かった」
「で、ですが指揮官、貴方のお話によれば手応えがあってかなりの出血だったと」
「あぁ、確かに手応えはあった。逃げる背中を上から斜めにばっさりよ。心の臓腑も止まっていたはずだ」
「他人のそら似、とは考えられませんか?」
「そいつぁ考えられねぇ、あの毛色、髪の色。そっくりな奴は滅多に居やしねぇ」
「情報源であるあの魔族の女が嘘をついている可能性は?」
それを聴いて俺はこの村に来た理由を作った魔族の女を思い出した。腰から羽を生やした赤髪の女、怪しがあいつは大丈夫だろう。
「奴の種族はプライドが高い、嘘はついていねぇと思うぞ?」
「戦いに参加してくれている市民からも証言は得ていますから実在するでしょうね」
「薄い桃色の髪と毛色の狐族......」
俺は葉巻を地図に押しつけた。この村がある場所だ。
「ッチ、手間ぁかけさせやがって。どこに居やがる......しょうがねぇ撤収だ、村に火ぃ放て」
「「「はっ!」」」
俺は葉巻を懐から取り出して火を付けながらテントを出た。外はもう暗くなり始めていた。
「ふー......前王は確かに殺した、奴の血筋を引いてる奴、その血を増やす奴も全員殺した。だがそれを依頼してきた今の王は腐ってやがる獣人は獣人って事だ......」
もう一度葉巻を吸って煙を空に向かって吐き出した。
「王族、その血縁は全部殺さなきゃいけねぇ、誰一人生かしちゃいけねぇんだ。この国に獣人の王はいらねぇ」
独り言は村に放たれた業火の音に消えていった。




