8泊目
「あれ?」
「なんじゃ?」
私とサテラちゃんがお風呂から上がって脱衣場に戻ると服を入れておいたはずの棚に貼り紙がしてあった。
『服は洗濯しておきます。荷物も部屋に運んでおきます、着替えは入れておいたので着替えたら酒場まで来てね。 スミカ』
えー! あの汚い服、洗ってくれるの!?
「あー、スミカが来たのか」
「なんか凄く気を使って貰って悪いです......」
「スミカが好きでやってる事じゃし、気にせんでもよいぞ? ほれ、これで体を拭け。拭き終わったら出入口の近くにあるカゴに入れるのじゃ」
「う、うん」
サテラちゃんが体に巻いた布と同じで、ふかふかの白い布を手渡してくれたので、受け取って体を拭いて貼り紙を綺麗に剥がして四つに折り畳んでから手首に紐で巻き付けてあった板状の鍵を扉に差し込んだ。
カチャっと音がして扉が開いた。
「え......」
中に入っていたのは私の村では当たり前の様に着られている服、上着やスカートみたいに二つに別れていない一枚の布から作られ服。私はそれを手にとって広げてみた。
一見真っ白だけど淡い水色をしている生地、触り心地も私が村で生活していた時に着ていた物とは比べられないほど心地い。と言うか絶対に高いよコレ......
私はソレを畳直して棚に戻して、下着を身につけた。するとサテラちゃんが宿の制服じゃなくてかわいらしい服に着替えて私の方に顔を向けていた。
「おーお主はソレを見て何も言わんのだな?」
サテラちゃんが服を見ながら指を指していた。
「え? あーコレ? うん、私の育った村だとこの服が普通なの」
「ほー、となるとお主は東の方角からやって来たのじゃな?」
「そうそう」
服の袖に右腕を通してから左腕も袖に通す、右前の服の布を体に押し当ててから左前の服の布を重ねてから帯で押さえるっと、帯も高そう......あれ? 尻尾を出す穴も空いてる? 普通に着ちゃったけど獣人用かな?
窮屈だった尻尾を両手でもこもこした毛を押さえなが穴に通してから毛並みを整えれば。
「よし、できた」
「手慣れておるのう、妾はその衣装は苦手じゃな。確か遥か東にある国の民族衣装じゃろ?」
「うん、私達キツネ族の御先祖様はその国に住んでたんだって、でも御先祖様達は東の国を出て村を作ったんだー。服装もその名残だってお母さんが言ってた」
「ふむ、確か『ヒガシゴロモ』? じゃったか?」
「そうそう、よく知ってるね?」
私は棚の扉を閉じ、体を拭いた布を持って出入口の横に置かれたカゴに入れてサテラちゃんと歩きながら酒場に向かった。
「ちなみにお主が着ておる『ヒガシゴロモ』な、スミカのじゃぞ」
「うぇい!?」
変な声と一緒に小さく飛び跳ねて止まっちゃった。
「驚くのも無理ないじゃろうが、この宿屋で体型が一致するのはスミカだけじゃろう、胸とかな」
「え!? あ! でもこれ! ほら、尻尾を出す穴が空いてるよ?!」
尻尾を強調するように後ろを向いて自分の尻尾を指さすとサテラちゃんが右手を腰に当ててため息を吐いた。
「はぁ、お主のために作り直したんじゃろう。世話焼きというかお人好しのスミカならそこまでやるぞ? 胸とかな」
「ふぁ?!」
さっきから私の胸の部分を見ながら言うサテラちゃん。そんな事どうでもいいよ! 嫌な汗が吹き出る前に私は走り出して酒場の前で急停止、酒場の扉を勢いよく開いた。
「スミカさあああああん!!」
「うわっ、ビックリした」
ゆったりとした青白いワンピースを着て、エプロンを身に付けていて、両手で鍋を持っていたスミカさんがぎょっとしていた。
「あ、あの! あのあのあの! こここの東衣なんですけど!」
「んー? 似合ってるよ?」
「え? えへへへ、ありがとうございますぅ。じゃなくて! この服、スミカさんのって聴いたんですけど?!」
「そうだけど? それにしても綺麗な髪だねー」
何も疑問に思ってない!? 心広すぎ!
食器が並べられた机に鍋を置いて、スミカさんが私に近づいてきて、私のまだ湿っている髪に触れた。
「うひゃ!?」
「んー、綺麗なサクラ色。やっぱり白い東衣によく似合うね」
「あうー......」
顔が熱い! 真っ赤になってる! 絶対に顔が真っ赤になってる! すると私の後ろからサテラちゃんがひょっこりと顔を出した。
「これ、何を口説いとるんじゃ? この女殺しめ」
「別に口説いてないよ? その東衣あげるよ、ティナちゃんにすっごく似合うからね。服も嬉しいと思うよ」
「ッツ!?」
ニッコリと微笑んだスミカさんを見て顔から湯気が出そうになった。
「......落ちた?」
「落ちたのう」
サーシャちゃんとサテラちゃんが食器の並べられた席の椅子に座りながら私を見ながらひそひそと何かを喋ってたけど頭に入ってこなかったです。うん......




