7泊目
しばらく無心で頭皮と髪の毛、耳を入念に洗って居たら泡で前が見えなくなっちゃった、手探りで魔石に触れると上からお湯が降り注いで来て泡を洗い落としてくれた。ふー、さっぱりした!
「ほー、綺麗な髪じゃな」
「......きれい」
「え? そう?」
サテラちゃんとサーシャちゃんに言われて私はしっかりと泡を洗い落とした髪を手に取る、んー? なんか色が違うような? 桃色は変わりないんだけど薄さが増してる? と言うか桃色が六割、白色五割? が混ざった色に見えた。うーん......そんなに汚かったの私って?
「うーむ、これも使こうてみるか?」
そう言ってサテラちゃんが渡してくれて別の小瓶を見せてきた。白い液体が入ってる。
「それって『しゃんぷー』でしょ?」
「......ちがう、これは『りんすー』って言う』
「んん?」
「くふふ、使う方が早いのう、妾にまかせい」
サテラちゃんが小瓶から液体を手に垂らしながら私の後ろに来た。あ、ホントだ。なんか粘度? 濃さが違う様に見える。後ろに回ったサテラちゃんが動きを止めた。
「お主......これは」
「あーごめんね。嫌な物見ちゃったでしょ?」
「いや、何でも無いのじゃ」
何事も無かったかのようにサテラちゃんが私の髪に『りんすー』を塗るように付けていく、あの白い布で隠しておけば良かったかな? もう遅いかー、おーサテラちゃんの手つきが慣れてる!
「これで良しっと、後はお湯をかけるだけじゃ」
満遍なく『りんすー』を塗られた髪はどこかべったりとしてたけどお湯をかけられてサテラちゃんの小さな手が髪を優しく洗ってくれた。その間は目を瞑っていた。何でって? 気持ちよくて寝そうだったから!
「よし! 終わりじゃ! むふふ、本当に綺麗な髪じゃな!」
「......つやつやー」
私は目を開けて自分の髪を手に取る、さらさらのつやつやになっていた。ヤバイ! これヤバイ!
「お、おお......」
「上がったら鏡を見るが良い、綺麗な髪になっておるぞ」
「うん! ありがとう!」
「くふふ、よし身体はこっちの『ぼでぃそー』という石鹸を使うのじゃ!」
「おお!」
どこからか捕りだしている魔法のアイテムに私は魅了されて、身体の隅々まで無心で洗った。
――――――三十分後
「はふぅー......」
「やっぱりお湯につかるのは良いものじゃなー」
「......あっつい」
髪と身体を綺麗に洗い終えた私はサテラちゃんとサーシャちゃん、二人と一緒に湯船に肩まで浸かっていた。身体に巻いていた布は折りたたんで頭の上に乗せてある、巻いたまま入るのもマナー違反だって。気持ちいいー。
「......出る、無理」
ざばっと湯船から立ち上がったサーシャちゃんが赤い顔で出て行った。あれー?
「猫族は熱いのが苦手じゃ、風呂は好きじゃがサーシャは長くお湯に浸かれんのじゃ」
「あー聞いた事あるかも」
なんかもう身体がお湯に溶けそうなくらい脱力している私を見てサテラちゃんが笑った。
「くふふ、お主もこの宿の風呂に心奪われたか」
「毎日入りたいー」
「そうかそうか、従業員としても嬉しい言葉じゃな」
数秒、沈黙が流れるとサテラちゃんがぽつりと言った。
「お主の背中の傷、えらく古いのう?」
「んー? あーこれねー、全然覚えてないんだけど小さい時に出来た傷なんだってーお父さんが教えてくれたの」
「そうか、傷を隠すのに必死になるのが常なのじゃがな」
「何が原因かわからない傷だからねー隠しててもなーって思ってるの、人前で裸になるなんて滅多に無いし、旅の間は水浴びしてて同性の人がビックリするから出来るだけ隠してたけどねー」
「......そうか、さてそろそろ上がるかのう、スミカがご飯を作って待っているはずじゃし」
「ご飯!?」
くぅー......
「あ......」
「くふふ、どうせ碌な物食べておらんのじゃろう? しっかり食えよ?」
「う、うん」
私は恥ずかしくてお腹を押さえた。もー! 食いしん坊の風呂好きキツネって思われたらどうしよう!? そう思って居るとサテラちゃんが湯船から上がった、私も続いて上がって頭に乗せてあった布を開いて身体に巻いてから脱衣場に向かった。




