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街かど宿屋のドラゴンさん  作者: 抹茶さめ
2話
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2泊目

 


「はぁ、お腹すいたなー......」


 噴水広場の長椅子に座ってそう呟いた私は手に握っていた物を見つめた。


 アインス金貨二枚と銀貨六枚、銅貨が四枚。


「はぁ......」


 本当はアインス金貨十枚になるはずだったのにと思うと悲しくなってくる、お金の事もあるけどお父さんとお母さんが心配だなー、聞いた話じゃ王都で暴動が起きてそれが段々と飛び火して内戦に発展したとか、幸い私の故郷がある村には被害がないらしいけどね。


 その内戦が起きたのが私がアインス王国に向けて旅に出た三ヶ月前、だから門の兵士さんが私を見て驚いてたんだ。


「言ってくれれば良かったのに、あーでも言われたら言われたでキツイかも」


 くぅーっとお腹が鳴った。アインス王国領内に入る時に路銀は尽きて、ここ二日は何も食べてない、水は飲んでたけどお腹は膨れないからね。


 取り敢えず宿を探そう、まだ明るいし時間はあるでしょ! 諦めないよ! 私は!


「よし! 行くか!」


 私は立ち上がり前を向いて宿探しを始めた。




 ―――――――――数時間



「ふえええええ! 何でですかー! 何でどこもかしこも高いんですか! 一泊銀貨八枚ってどう言うことですか?! 高過ぎですよ!」


 十件目の宿を出て少し歩いた路地裏で私は悪態をついていた。だって高いんだもん! 街中って高級宿しかないの?! しかもご飯別で銀貨六枚~八枚が相場らしく、安い宿はないかと聞いてもここら辺はこの値段が相場だと十回聞いた。


 メフィア魔術学園に行こうかと思ったけど、入寮代がアインス金貨二枚だったはずなのを思い出してやめた。着替えも制服も買えなくなっちゃう! だから取り敢えず宿を取ってから短期で働ける場所を探して、お金を稼いでからじゃないと、とてもじゃないけど学園に行けない。


「はぁーもう! 怒ったらもっとお腹すいてきた! 仕事だって探さなきゃいけないのに!」


 重くて降ろしていた荷物の肩紐に手を掛けたその時。


「おい、姉ちゃん。仕事探してんのか? ならいいとこ知ってるぜ? ヒヒヒ」

「今なら一時間働くだけで金貨三枚だぜぇ」

「はい?」


 いきなり路地裏の奥から現れた人間の男二人に私は首を傾げた。一時間働くだけでアインス金貨三枚?! 何その高時給!


「へー、私、今日この国に来たばかりで判らないんですよー」


 ボロボロの外套のフードをまた深く被り直してそう言うと、男二人は顔を見合わせてニヤリと汚く笑った。


「へっへっへ、そうかいならお兄さんが案内してやるぜ」

「ケヒヒ! 大丈夫だよぉそんなにキツくないからさぁー」

「あーそうなんですか。それは楽しみ―――だとでも言うと思いますか! 典型的なアヤシイお店の勧誘じゃないですか!」

「「ッ!? な、何故ばれた!」」

「アホなんですか?! バカなんですか?! 時給金貨三枚ってどう考えてもおかしいでしょう?! 田舎から来た娘ってだけで顔がにやけてますよ!」


 ビシッと指を指すと、男二人は同時に口元をてで隠した。遅い!?


「チッ! 商品に手荒な真似はしたくねぇんだが」

「多少傷が付いてもそれがいいって言う客もいるしなぁ!」


 スラリと男二人は腰から刃物を取り出した。夕暮れ時の茜色を反射する刃物を見て私は一瞬肝が冷えた。だけど、こんなところでこんな奴らに負けて連れていかれるのなんて、絶対に嫌!


「来ないでください!『私の願いに答え―――』 ッ!」


 私は右手を前に突きだして呪文を唱えようとした時、目眩がして唱えるのをやめてしまった。


 くぅー......


 こんな時に空腹!? しっかりしてよ私の体!


 それをチャンスと見て一人の男が私の右手首を掴んだ。何この怪力!? 振りほどけない!


「はーい捕まえたーケヒヒ! たくよぉ、ビビらせやがってぇ来てもらうぜぇ」

「い、いや! 放して!」

「おい! 暴れるんじゃねぇ!」


 男の手を振りほどこうとすると別の男が私の外套を掴む。すると、雨風、照り付ける日差しを防いでくれていた外套がいともあっさり破けてしまった。


 ビリビリと音をたてて破れた外套から私の髪がこぼれ落ちた。


「ヒュー! こいつあ上玉だぜ!」

「お前のキツネ族かぁ、クヒヒ、しかも桃色の毛色は高く売れるし客も付くぜぇ!」

「私は物じゃない! 放して! 誰かー! 助けてー!」

「クヒヒ、誰も来やしねぇよぉ、この時間帯に裏路地に近づく奴はいねぇ」

「そうだぜ、諦める事だな姉ちゃん、ケケケ! おい! こいつにあれぇ付けろ」

「おう!」


 そう言って男が私の右腕に血に濡れたような銀色の腕輪をはめた。カチャリと金属音がするとその瞬間、身体から力が抜けた。私はビックリしてその腕輪を凝視する、見たことがある。エメル公国の繁華街でこの腕輪を付けていた人達が居た。


『奴隷の腕輪』そんな名前の物だった気がする、付けると魔力や筋力に大きな制限がかけられてしまうと言う代物、元々は罪人に付けるはずの物が闇市に流れたのが原因ってお父さんから聴いた。


 そんな......アインス王国まで来てここで終わり? よく分からない人の所に売られて性欲の捌け口にされて死ぬのが私の運命なの?


「手こずらせやがって! ほら行くぞ!」

「ケヒヒ! ほらこ―――ぶひぃ!」


 汚い悲鳴が聞こえたと思ったら腕を捕まれていた力が弱ったのが伝わって来た。そして後ろから何かが物凄い勢いで走ってきたのが聞こえた。


「......汚物にキーク」

「ひゃぶぅ!?」


 私の真横に立っていた男に誰かが顔面にドロップキックを食らわして吹き飛ばした。ふわりと着地したその人、その子? はふわふわした白い髪の毛、白い猫耳、白い尻尾が生えた猫族の少女だった。服装はどこかの酒場で注文を取っている人の服に見えるけど。


「あ、あの! ありがとうござ―――」

「ヒャァアア! 死ねやぁああああ!」


 お礼を言おうとしたその時、私を掴んでいた男が立ち上がり刃物を私に振り上げた。


「きゃああああ!」


 私は両手で身を守るようにしたが何も起きなくて瞑っていた目を開けると、そこには片手に紙袋を抱えながら男の顔面を掴んでいる女の人がいた。


「まったく......よいしょっと!」


 軽いかけ声と共にその女の人が男の頭を固い地面にぶつけた。ゴシャっと言う音と共に男の頭が地面に埋まる、うわぁ......


「うわぁ......」


 あ、心の声が漏れてた。私の声を聴いてその女の人が私の方を向いた。焦げ茶色の腰まである髪、頭には見たことが無い二本の黒い角、背中には紋様が浮かんでいる黒い羽、凄く綺麗な人がそこに居た。


「大丈夫?」

「え、あ、ふぁい!」


 変な声が出ちゃった。






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