1泊目
長い列に並んでいる、かれこれ二時間位かな? 早くアインス王国に入りたいな。まずは宿を探して、あ、その前に換金しなきゃね。
私はボロボロの外套のフードを深くかぶり直してから貴重品が入っている革袋を開いた。入国用手形よし、身分証明書よし、お金は......エメル金貨十枚、お父さんとお母さんが働いて貯めてくれていたお金だ、大事に使わないと。
「次......おい、どうした?」
「あ、はい!」
いつの間にか私の番が来ていた。いけないいけない、ここまで来るのに三ヶ月かかっただもん、ここで失敗しちゃったら目も当てられないよ。
入国管理をしているか人間の兵士さんが不思議そうに首を傾げていた。
「どうかしたのか? 具合が悪いなら治癒師を呼ぶが?」
「あ、大丈夫です!」
「そうか? なら入国手形と身分証明書を」
「は、はい! えーと......どうぞ!」
「あ、ああ。拝見する」
私が革袋から取り出した書類を勢いよく差し出すと、兵士さんがびっくりしながら受け取って目を通していた。
「手形に問題は無いな......えーと身分証明書はっと......ッ!」
身分証明書を見て兵士さんの顔が強張った。え! 何か間違ってる?! 私も顔がひきつった。すると近くに居たもう一人の兵士さんが歩み寄ってきた。
「おい、どうしたんだ? 不備がないなら早く通せ、後ろが詰まってきてるぞ?」
「ああ、すまん。だがこれは......」
「どうしたって―――成る程、そう言うことか」
私の身分証明書を見ていた兵士さんが私をじっと見つめてから腕を組んだ。
「君はここへ来る時にいつ、エメル公国を出た?」
「え? あ、三ヶ月程前です」
「三ヶ月前か......アインス王国への入国目的は?」
「えっと、アインス王国内にある『メフィア魔術学園』に入学する為に来ました!」
治癒魔術を学ぶならエスルーアン聖王国、攻撃魔法や防御魔法、錬金術等を学ぶならアインス王国って言われてるけど、他にも名門と言われてる学園もある。
アインス王国が経営している『メフィア魔術学園』を選んだ理由は学費が安いのと、全寮制で有ること。他にもいろいろあるけど私が使う魔法はメフィア魔術学園でしかも学べず、伸ばすことも出来ないらしい。
「そうか......頑張れよ、お嬢さん」
そう言って兵士さんが入国手形にバンっと判子を押して、身分証明書と一緒に渡してくれた。
「はい! ありがとうございます!」
私はそれを受け取って背中に背負った荷物の重さも忘れるくらい嬉しくなってスキップしながら門を潜ってアインス王国に入国した。
―――――――――検問場
「いいのか? 行かせちまって」
「まだ十五歳だぞ? あのまま帰しても地獄だ。それに入国手形は正式なものだし、身分証明書もどこもおかしくはない」
「そりゃわかるけどよ、ここでだってどんな目に遭うか......」
「あのくらいの娘が居るとなぁ......無下に出来ないって言うか」
「わかる、俺の娘も嬉しいことがあると跳ねるように歩くんだ」
「「はぁ......仕事しよう」」
―――――――――同時刻 換金場所
「ええええええ!!」
私は換金所の窓口に居る人間のお姉さんに向かって叫んでしまった。ここに来るまでに街中を通ってきた。市場が活気づいていてみんな表情が明るい、換金所の場所を通りすがりの人に聞いた時も小汚い格好をしている私を見ても嫌な顔一つもしないで道を教えてくれた。
優しい国、暖かい国だなーと思っていたら私はどん底に落とされた気分になった。その理由は―――。
「申し訳ありません。現在、エメル金貨の価値は殆んどありません、金としての価値はありますけど......何分、不純物が多くて」
そう言って天秤の左にエメル金貨を四枚、右にアインス金貨一枚を置いてようやく釣り合っていた。背中に背負った荷物が急に重くなって、私はその場に崩れ落ちた。
「あ! ちょっと! 大丈夫ですか!?」
お姉さんが心配して身を乗り出してきた。
「そんな......価値がないって......戦争になったなんて聞いてない......」
そう、私の母国。エメル公国は内戦をが起きたらしく、お金の価値が殆んど無くなってしまったらしいのです。




