日常
カルロスさん達の馬をエスルーアンに飛ばしてから二日後、気持ちが良い朝日が差し込む中、私は五日間の間に溜まった事務仕事をしていた。
「ふぁあああ......眠いのじゃ」
「......あれ? サテラが起きてる」
「んあ! そうじゃった。忘れておった。もう二人とも帰ってきておるのだった。あー寝直すかのう」
薄着でお腹を掻きながら降りてきたサテラをサーシャが指差して言っているのを私は横目にホールにおいてあるテーブルの上で今月分の売り上げを計算していてふと思い出した。
「あ、ちょっとサテラ!」
私が呼ぶとビクッと震えたサテラ。はーん、またなんかやらかして隠してるな。
「な、なんじゃ? 何もしとらんぞ?!」
「何もしてないなら何で構えながらじりじりと後ろに下がるの?」
「何もしてないと言っているじゃろう!」
「......部屋に飲み物持ち込んで、盛大にぶちまけて掃除してない」
「なんで知ってる?! じゃなかった......何で知っておるのじゃ?!」
「......匂いでわかる」
「っく! 逃げるが勝ちじゃ―――ひぃ!」
逃げようとするサテラの腕を掴む、逃がさないよ?
「やめて! まだ死にたくない!」
涙目で訴えてくるサテラに溜息が出た。私はどこかの死神か何かに見えるのだろうか?
「はぁ、まったく。誰に似たのかな、この子は」
「それは勿論母様とスミカの両方じゃろ。良いとこ取りの妾―――」
「......ふっ、おっぱいは無いけどね」
サーシャ鼻で笑ってからボソッと言うとサテラのこめかみに青筋が浮かび上がった。
「言ってはならん事を言ったなサーシャ! そもそもこれは呪いなのじゃ! 母様が妾に施した『胸が絶対に大きくならない呪い』のせいなのじゃ! おのれクソババア! 今度あったら八つ裂きに―――」
「はい、これ。ディーネから預かってきた手紙」
「―――して、え? 母様から!? ありがとうスミカ!」
鬼の形相から一転、無邪気な子供の表情に戻ったサテラが手紙を受け取ると笑顔で部屋に戻っていった。あの変な『~のじゃ』とか『妾~』とかいうしゃべり方やめたら良いのに、いつからあんなしゃべり方になったんだろう? そう思いながら計算に戻る。うげ、赤字か......今月は色々なポーション使ったし、お店の酒場を五日も閉めたからその損害が大きい、後ゲンシュの馬鹿王子。
あれって営業妨害だから国に請求できるよね? あーでもノエちゃんに迷惑かけられないしなー。
『な、なんじゃとおおおおおおお!?』
と、思って居たらサテラが大声で叫び、廊下を走る音とがしたと思ったら今度は階段を勢いよく降りてきた。服装は少しゴスロリっぽい服に替わっている、サーシャほどじゃないけど結構かわいい。
「おいスミカ! これは本当に母様からの手紙なのだな?!」
「そうだけど、何?」
私はかけていた眼鏡を外してテーブルの上に置き、左肘をついて、手のひらの上に顎を乗せてサテラを見た。
「母様が戻れるかもしれないと書いてあるの!」
「あー、今回で粗方の因子は排除出来たからね、当分はあそこに居ると思うけど」
「どのくらい?!」
「ディーネ次第だからなーそこまではわからないかな」
「でもあそこから出てこれるんでしょ? ありがとうスミカ! 大好き!」
いつの間にか近くまで来ていたサテラが私に抱きついてきた。いつもこんな風に素直なら良いのになーん? ふとサーシャと目が合うと受付場所から出て私の方に歩いてきて抱きついているサテラを引っぺがした。
「んひゅ?! ちょっと! サーシャ! 妾が何をしたと言うのじゃ!?」
「......お母さんは渡さない」
そう言ってキュッと抱きついてくるサーシャ。何この可愛い生き物。
「くぅ! これ見よがしに抱きつきよって! 妾にも抱きつかせろ!」
「や!」
両手をワキワキさせながら近づいてきたサテラをサーシャが拒絶するのを見て私は微笑んだ。
「ふふ、はいはい。よし、じゃー朝ご飯にしようか。サテラが珍しく起きてきたし、少し豪華にしてあげる」
「なに?! やったのじゃ! 酒場に一番乗りは妾じゃ!」
「......お腹空いたー」
「こらこらー廊下は走らないー!」
「「はーい(......はい)」」
返事はするけど走ることをやめない二人を見て溜息とは違う息が漏れた。私は机の上に広げてあった紙束を纏めて、脇に抱え、眼鏡をポケットにしまうと二人の後を追うように厨房がある酒場に向かった。
さて、今日は何を作ってあげようか。
これにて『1話』終わりです
次の更新は少し期間が空くと思います(多分)
出来るだけ早く更新します。




