38泊目
トッド村出身者達が横一列に並んでいる、その列の前にはスミカ殿がまたコートを脱いでサーシャに預けていた。すると村から三十人程の兵士達が走ってきた。
その最後尾に居た甲冑と服装が違う兵士、兵士長と言う役職の男がスミカ殿の前で止まった。
「確認作業をしていた兵士達全員の避難を確認しました!」
「......うん、生命反応は無いね残念ながら」
「そう......ですか」
「ええ、サーシャはカルロスさんの所へ」
「......ん、分かった」
「私も下がります」
数秒、目を閉じたスミカ殿の言葉に兵士長が肩を落とし、トッド村出身者達も肩を落としたりすすり泣く声が聞こえた。サーシャがコートを抱えて走ってきて俺の横に並んだ。
兵士長も走って来て、村の出身者とは別に綺麗に整列している兵士達の前で止まりトッド村の方を向いた。
そして、スミカ殿が此方に振り向いた。
「今から村を燃やします。多分、灰も残りません宜しいでしょうか?」
「「「......」」」
その言葉に村の出身者達はざわつき、隣同士で視線を交わしたりしていた。すると一人の若者が歩みでた。
「村が無くなったとしても俺が、いや、俺達が必ず元に戻して見せます! そうだろ! みんな!」
「あ、ああ!」
「いつか必ずな!」
「故郷はなくなりやしねぇ!」
若者が仲間達に訪ねると次々に答え始めていた、さっきまでの暗かった表情はどこかに消え、少しだけ前を向いているようだった。それを見ていたスミカ殿が微笑んで頷いた。
「わかりました。その願いが叶うことを祈っています」
スミカ殿がそう言いながら右手を天に掲げ指を弾く、その瞬間に俺は二度目の強烈な光を浴びた。
ズズン!っと地鳴りが起こる、そして低い大きな呼吸音、光が収まるとそこには一匹の巨大な漆黒のドラゴンが佇んでいた。
「ッツ!?」
「うわぁああ?!」
「狼狽えるな貴様ら!」
何人かの兵士が驚きの声を上げたり尻餅を付いていた。気持ちは良くわかる、俺も驚いたからな。
『驚かしてすみません、これだけの面積の村を燃やすのは元の姿じゃ無いと少しキツいので』
スミカ殿が長い首を下げ、そして村の方を向く。
『さようなら......『聖なる業火』』
一瞬世界から音が消えた。次の瞬間、村の中央が光ったと思ったら轟音と共に巨大な火柱が上がり、天をつく巨大な十字を象る、その根元に位置している村は火の海に包まれた。十字が消えても炎が収まる気配はない。
「......これが、『神威魔法』!」
軍務大臣が目を輝かせながら火の海を見つめていた。かなり距離が空いているにもかかわらずここまで熱気が伝わってくる。しんいまほう? 聞いた事が無い単語だな......帰ったら調べてみるか。そう思いながら火の海を見つめる、スミカ殿が特別なのか、それともドラゴンという生き物自体が強いのか、それは定かでは無いが一瞬にして村一つを火の海に変える力、多分本気では無いだろうな。
もしだ、もし、スミカ殿が本気で力を使えば国すら跡形も無く消し去る事が出来るかもしれない、アインス王国に攻め込む、それはスミカ殿の安息の地を荒らす行為だ。考えただけでもゾッとする。
業火を見つめている漆黒のドラゴンの背中を視界に入れて俺は溜息を吐いた。
二時間ぐらいだろうか? 炎が収まるとそこには焼け爛れた大地があるだけで他は何も残ってはいなかった。本当に更地だな。
アインス王国の兵士達と軍務大臣は既に居ない、三十分程前にスミカ殿が王城に戻るように指示したからだ、見届けるから国に戻り報告しろと言う感じで話していた気がする。
俺とケインズは丘に腰を下ろして、村があった場所を眺めていると後ろから足音が聞こえた。
「......なに、黄昏れてるの?」
「ん? ああ、サーシャ殿か」
「すげーなーと思ってたんすよ、ね? 団長」
「半分そうだな」
「......ふぅん」
興味なさそうにサーシャが返事をすると腰を下ろして膝を抱えた。
「スミカ殿は?」
「......ダンジョンの穴を塞いでる、ついでに入り口も塞ぐって言ってた」
「入り口を? 何故だ?」
「......知らない」
「そうか......」
素っ気なく返事をしてきたサーシャに俺はそれしか言えなかった。焦げた匂いと一緒にそよ風が吹いた。




