緊急会議
「今すぐに兵を送り出すべきだ!」
少し頭の薄い貴族の男が立ち上がり大声でそう言いうと私の左隣に座っていた中年の男性が小さく舌打ちして手で制した。
「早まるなベッグリー卿、まだ四日しか経っていないのだぞ?」
「お言葉ですがサトレイ財務大臣殿、SSランク冒険者は我が国の宝! もし他国に亡命でもされれば途方もない被害が出ますぞ?!」
「ベッグリー卿に言うとおりだが亡命の可能性は無いだろう、三番の手紙の件、その内容は把握しているし、『死者の祭壇』がどいう物かも分かってはいる。だが、すでに四日が経過していることは事実、もしSSランク冒険者であるスミカ様の身に何かあったならば何か知らせがあるはず」
今度は少し体つきがよく日焼けしている中年の男性がそう言って私の方を見る。
「それで? 女王陛下に何か知らせは?」
「何もありません、宿屋にも目立った動きはありません」
スミカ様が『死者の祭壇』に入ってからすでに四日が経っていた。それに気付いた一部の貴族達が『亡命だ』とか『死んだのでは?』とか噂をたて始めた。
失礼な人達、。誰のお陰でここまでこの国が発展したのか忘れたのかしらね、あーでも公爵家ぐらいの上級貴族しか知らないか。
建国してから四百年、どこの国よりも早く上下水道を城下街全体に行き渡らせ、他国とは少し違う『都市大結界』を完備している我が国はスミカ様が居てくれたからこそ豊かに発展できた。
と、私は父上に聞いただけだけどね、それにしても何時までこの生産性もなければ利益もない会議をやらなきゃいけないのかしらね? 朝早くに起きるのは別に良いわよ? 慣れてるから、でも御前会議の議題がスミカ様の安否についてに変更されてるのは何故!?
大丈夫よ! あの人が死ぬわけ無いじゃない、でもまあ、『三番の手紙』なんて物が私が生きている時に来るとは思っても居なかったわ、まだ十四年しか生きてないけど。
そんな考えを巡らせていると会議室に集まった各大臣達と公爵家などの上級貴族達がいつの間にか白熱していた。初めて見たんだけど? こんなに白熱した会議。何? もしかして私との会議では白熱する要素がないと? はぁ......
「はぁ......」
「お疲れですか殿下?」
「あ、ごめんなさい。口に出てしまいました」
私は口に手を当てながら右隣に座っていた軍事全般を取り仕切っているサマック軍務大臣に小声で謝った。
「溜息の一つも出ますよ。私ですら呆れていますからね」
「呆れるとは?」
「今みたいに真剣で真面目に取り組んでもらいたいと言うことです。スミカ様がいるからこの国は攻めず、攻め込まれず、そして豊かに発展しました。そのような存在がいなくなると上級貴族達は不安に思っているのでしょうね」
「はぁ......依存しすぎです。あの人をこの国に留めていると考えるのではなく留まってくれていると考えるべきではないかしらね?」
「ははは、仰る通りです。ですがスミカ様の影響力が強いのも事実、ここにいる面々は何かしらあの方に助けられているが居ますからね」
実際私もそうだ、王を決めるときに少し騒動になった時に色々助けられた。懐かしいなぁと思って居た時、会議室の扉が行きよい良く開かれ一人の兵士が汗を流し、息を切らせながら転がり込んできた。
「し、至急です陛下!」
そういう兵士にサマック卿が立ち上がり睨みを効かせた。
「至急でも御前会議の途中、しかもノックもせずに入ってくるとは何事か!」
「し、失礼しました! サマック軍務大臣殿!」
「私にではない! 女王陛下の御前だというのに私に向かって謝罪するとはどういうことか!」
「いいのよサマック卿、緊急なら仕方ないわ。それで何事かしら?」
私が顔を真っ赤にしているサマック卿を制してから兵士に問いかけると姿勢を勢いよく正した。
「はっ! 先ほど見張りの兵から報告がありトッド村、『死者の祭壇』のある方角に光の線が山を突き抜けて出て来たと言う報告を受け、急いで来た次第であります! 女王陛下殿!」
その場に居る全員が息を飲んだ。私もいつの間にか椅子から立ち上がっていた。光の線? 光線......まさか!
「本来の姿に戻っている......?」
「「「「!?」」」」
静まりかえった会議室に私の呟きは良く響き、全員が一斉に私の方を見てきた。その連携は怖い。そばに控えていたクリスが汗を浮かべながら口を開いた。
「陛下、兵を派遣しましょう。せめて情報だけでも入手しない事には判断出来ません」
「そ、そうね。サマック卿、お願いするわ」
「はっ! お前、私と来い!」
「了解しました!」
青いマントを翻しながらサマック卿が兵士と一緒に会議室から出て行き、私はそれを見送ると椅子に座った。すると額に汗を浮かべた上級貴族と各大臣達が私に視線を向けてきて髪の薄い上級貴族のベッグリー公爵が震える唇で口を開いた。
「わ、私どもはどのように致しましょうか? 女王陛下殿」
「取り合えず情報を待ちましょうか」
私のその回答にみんなはただ頷くだけだった。




