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街かど宿屋のドラゴンさん  作者: 抹茶さめ
1話
35/93

29泊目

 

 巨大なドラゴンが轟音を鳴らしながらスミカ殿の一撃で倒れ込んだ。


『いったーい! 女の顔を殴る普通?! しかも貧乳って言ったわね!? 経産婦に向かってロリババァって言ったわね?!』

「「「!?」」」


 紅黒いドラゴンが首を持ち上げながら発した声に俺達三人は目を見開いた。あの肌がピリピリとする声ではなくディーネの声だった。


 スミカ殿は背中の羽をはためかせて宙に浮きながら指を指した。


「うっさいわ! サクッと終わらせてサーシャとまったり生活に戻りたかったのに村は全滅させるわ、大量にギブリンは配置するとか嫌がらせか! 自分でしっかり『もう一人の自分は押さえ込める』とかどや顔してたのは誰だよ?!」

『何言ってる―――どえぇ!? 何これ?! 何なのこの姿、裏の私何やってんの!?』

「あはははは! ダッサい姿! 中途半端に私の血を取り込むからそんな風になるんだよ」

『酷い! こんな醜いトカゲに成りたくてなった訳じゃないのに!?』

「誰がトカゲだって!? ケンカ売ってるの?!」

『貴方の事じゃないわよ?!』


 四枚の翼をバッサバッサと動かしながら自分の姿に驚いている紅黒いドラゴンと、腹を抱えて笑っていて、いきなりキレたスミカ殿。


「ケインズ、サーシャ殿、何が起こってるんだ?」

「俺には何も見えません」

「......私が聞きたい」


 俺が指差す先ではギャアギャアと言い争う赤黒いドラゴンとスミカ殿、今までの死闘はなんだったのかと言いたくなるような口喧嘩だった。


『大体何が可愛い娘よ! 何をどうすればスミカからあんな可愛い獣人が産まれるわけ?! 嘘っぱちじゃない!』

「うっわ! 言っちゃいけないこと言った! 人に自分の娘押し付けといて母親気取り?!」

『母親だもーん! へっへーんだ!』

「何威張ってるの?! あ、分かった母親であることを盾に娘より胸が小さい事を隠してるな?」

『なんだとこのヤロウ!? え、ちょっと待って、サテラって私よりおっぱい大きいの!?』

「少しだけ」

『良かったーばいんばいんになってたらどうしようかと―――』

「そう言うと思ってサテラには『胸が大きくならないのは母親が栄養を吸い取っているから』って教え込んでおいた」

『人の娘に何すり込んでるの!? 胸が小さい=私(母親)のせいって絶対思ってるじゃない?!』

「実際そうなった、ふふん」

『鬼畜! 鬼! 悪魔! ロリコンドラゴン! 返して! 私の可愛かった娘を返して!』

「誤解されるようなこと言わないでくれる?!」


 そんなやり取りがかれこれ五分ぐらい続いており俺とケインズは兜を脱いでサーシャからもらった干し肉を囓って眺めていた。


「実際どうなんですかい? サーシャ殿」

「......なにが?」

「サテラ殿とサテラ殿の母上とどちらが胸が大きいんですかいね? あべし!」


 変なことを口走り始めたケインズの頭を叩く。


「何を下品なことを聞いているんだお前は?」

「だって気になるじゃねーか」

「......お店で一番多きのがお師匠、その次に私、最後がサテラ」

「言うのか......」

「ヒュー! スミカの姉さんは着やせするタイプか、全然無いように見えるぜ?」

「......そう、おか......お師匠は着やせする、と言うか食べてもあの人太らない」

「貴族令嬢が聞いたら発狂するぞ、それは」


 美しく細くを生きがいのような人も居る貴族社会の令嬢やご婦人方は食べたい物は控え、苦痛とも言える絶食を行い、尚且つ美しさは保つと言うよくわからん修行のようなことをやっているらしい、騎士の家系に生まれた俺はまったく知らんし、母上もそんな苦労はしていなかった。


「で、話を戻すけど。どっちが大きいんですかい? ブヘ!?」

「しつこいぞケインズ」

「......サテラの方が大きい」

「だから言うなと......」


 俺は頭を抱えてくなった。


「サーシャ殿はスミカ殿の娘だったのか」

「......そう、でも血は繋がってない」

「そうか、何か事情があるのだろう?」

「......うん、だけどお師匠は私のお母さん」

「そうか」


 そうサーシャと言葉を交わしていると口喧嘩が更にヒートアップしていた。


「サーシャは可愛いんだよ? 寝るときは一緒だし抱き付いてくるしでお年寄りっぽいサテラより可愛いね」

『人の娘をディスらないでくれる?! サテラだって可愛いわよ! 一緒に居られた期間は短いけど赤ん坊だった頃なんて天使のようだったわ!』

「いーや! サーシャの方が可愛いね!」

『サテラの方が可愛いわよ!』


 俺とケインズはニヤニヤしながらサーシャを見ると視線を反らされた。


「......恥ずかしい」


 少し頬が赤いサーシャに苦笑していた時、ゾワッとしたら気配が背中を通り抜けた。この感覚は初めてディーネに出会った時の物に似ている。


『うるさいわ! 我が気を失ってる間にごちゃごちゃ話しおって!!』


 ピリピリと肌を刺激するあの声が赤黒いドラゴンから放たれた。





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