26泊目
カチャリとスミカ殿が黒いオーラを纏ったディーネを見ながらサイドポーチから取り出した銀色の腕輪を左腕にはめた。
「スミカ殿、聞きたい事は山ほどあるのだが、今はそれどころではない......勝算はあるのか?」
俺が訪ねるとスミカ殿は振り返り少し微笑んでいた。するといきなり一つの小さな魔方陣がスミカ殿の背後に現れ、そこから何の特徴もない一本のロングソードが現れた。
それをスミカ殿が引き抜いて床に突き刺した。その瞬間、小さな魔方陣が頭上に数十個現れてスミカ殿が突き刺したロングソードと横一列になるように降ってきて刺さった。
「これから先には来ないでください、巻き込むかもしれませんし」
「......お師匠は勝てるの?」
「んー、大丈夫じゃないかな? 武器は違うの使うけど」
「......そう」
「うん、行ってくる」
剣で出来た境界線からサーシャの頭を撫でたスミカ殿はディーネを正面に捕らえた。そして―――
「『武器庫解放』」
聞いたこの無い呪文が聞こえると頭上に光を感じて視線を上に向けた。そこにあったのはあのロングソードが出て来た小さい魔方陣、七色に輝あの魔方陣が『大広間』の天井を埋め尽くすほど展開されていた。
「なん......だ、これは」
「団長! アレ! 何か出て来ますぜ?!」
「何!?」
ケインズが指差す魔方陣で埋め尽くされた天井を見ると境界線に使われたロングソードの先端が徐々に現れていた。そして、降ってくる。
ドドドドドドッと無数の剣が降り注ぎ赤い液体が水しぶきを上げる。境界線より向こうは剣で埋め尽くされていた。ディーネにも擦ったのか頬が切れており血が滴っていた。彼女は左手の人差し指で傷を一撫ですると血の付いた指を口に運び一舐めして口角をつり上げた。
傷は一瞬にして塞がっていた。凄い再生能力だな、それにしても剣を出現させる魔法か? 初めて見るし初めて聞いた呪文だ。
「す、すげぇ! スゲぇ魔法ですねサーシャ殿!」
興奮したケインズがサーシャの肩を掴んで揺らしていた。
「......序の口」
「え?」
「......これは下準備、お師匠は剣士。だけど普通の武器はお師匠の力に耐えられない」
「というと?」
「......一回振っただけで粉々になる、見て」
サーシャがスミカ殿が最初に手にして突き刺した剣を指差した。おや? 刀身全体にヒビが入っているでぞ? いくら普通のロングソードとは言え鋼鉄製だ。ちょっとやそっとではヒビは入らんぞ?
「......軽く持って軽く刺しただけでこうなる」
「鋼鉄製では無いのか?」
俺が問うとサーシャは首を横に振った。
「......鋼鉄製なら刺した瞬間に砕ける」
「ではこれは何で出来ているのだ?」
「......ミスリル」
「はい?」
「え?」
「......ミスリル鉱石で出来てる。ここに並んでる剣もそう、今降ってきた剣もそう」
「「えええ!?」」
バッと俺とケインズは降り注いで来た無数の剣に目を向けた。これが全部ミスリル製ロングソードだと!? どんな金属より硬く研げば切れ味が増し、魔力の乗りも良いため魔剣の素材ともされる超高級品がこんなに沢山だと!?
「一体金貨何千枚するんだ......?」
「多分一生遊んで暮らせますぜ団長、ここら辺の剣数本引っこ抜いて売れば......」
「......昔、一本売りに行った。でも武器屋の店主が気絶した」
「それはそうだろう......一見普通のロングソードだが飾りっ気がない洗練された姿、よくよく見るとミスリル独特の薄緑色が見える刀身、見る者が見ればかなりの業物だぞ?」
「......全部出来損ないって言ってた」
「誰がだ?」
「誰だ?」
「......お師匠」
「「あ、はい......」」
俺とケインズは同時に頷いた。もう考えたくない、驚くのに疲れた。




