白雪姫 3
『王妃と小人たちは馬車に乗り込み
平原をまっしぐらに突っ走りました。
すると向うから軍馬のいななきが聞こえて来るではありませんか。
隣国の軍隊が目と鼻の先に迫ります。
先頭では隣国の王が直々に指揮をとっていました』
隣国の王(院長)
「これはこれは王妃陛下!
こんな場所までご足労いただけるとは…
なんの御用でしょう」
『隣国の王はいやらしい笑みを浮かべました。
領地を増やしたくてうずうずしているのです。
王妃様は薬の瓶を取り出して隣国の王に見せました』
王妃「我が国に攻め込むところを邪魔して悪いのですが
この薬の解毒薬がそちらの国にあると
聞いたものですから…」
隣国の王「いかにも、その解毒薬は我が国謹製
持ち合わせもございます」
『隣国の王が指示を出すと
配下の兵士が一顆のりんごを
持ってきて、王に手渡しました』
王妃「それが…解毒薬なのですか?」
隣国の王「これは我が国で30年に一度しか
収穫できぬ魔法のりんご
解毒薬とはこのりんごの果汁のことなのです。
一度に作れる薬の量はごくわずか。
それ故に値段は宝石よりも高い」
王妃「厚かましい願いではありますが
どうかそのりんごを分けていただけないでしょうか。
娘が毒を入れられ…
いえ、私が毒を入れたせいで
死にかけているのです」
隣国の王「これは奇妙なことですなあ…
自分で殺そうとした子供をまた助けたいとは…
王妃陛下はずいぶんと気まぐれのようで」
兵士1・2「はっはっはっは…」
小人1「貴様ら!!」
王妃「いいのです、全ては私のあやまち
どんな辱めも受けます」
隣国の王「ほう、どんな辱めも受けると
仰いましたな?」
王妃「は、はい…」
隣国の王「お望みの解毒薬のりんご…
差し上げてもかまいませんよ」
王妃「本当ですか!?」
隣国の王「ええ、少し余興に
付き合っていただけたのならね…
準備をしろ!」
兵士1「は!」
『兵士たちは器用に鉄棒を組立てて格子状に形作り
その上に鉄板を敷き、下の空洞に大量の薪をくべ、火を入れました。
すると禍々しい炎の道が出来上がったのです。
火柱はめらめらと渦巻いて鉄板の上にまで跳ね上がっています。
さらに兵士は火の中にサンダルを入れて熱し、
王妃の前に差し出しました』
王妃「これ…は…」
『じりじりとした熱気は離れていても伝わってきます。
王妃様は冷や汗が出ました』
隣国の王「その鉄のサンダルを履いて
炎の道を通り抜けることが
出来たら!!
りんごは差し上げますよ!
通り抜けられたらね!」
兵士1・2「はははははは!」
王妃「わかりました」
隣国の王「えっ!?」
『王妃様は何の躊躇もなく
サンダルを履き、鉄板の上を歩き始めました』
王妃「ぐうううううううう!!」
『王妃様は悲鳴を上げながら、涙を流しながら
足を引きずりながら進みます。
気を失いそうになるたび
白雪姫のことを思って心を奮い立たせます』
王妃「はあっ、はあっ、うううう…」
『ゆっくりとですが
王妃様は痛みをこらえて
懸命に前に進み続けます
隣国の王も兵士も言葉を失っています』
王妃「ふうう、ああああああ!」
『ついに炎の道を渡りきりました。
王妃様は糸が切れたようにぱったりと倒れました。
小人たちは王妃様のサンダルを脱がせ、助け起こします』
七人の小人「王妃陛下!」
王妃「りんごは、取れましたね…」
七人の小人「はい!」
『隣国の王も王妃様にかけよります』
隣国の王「数々のご無礼をお許しください。
思えば私たちもあの男の口車に乗せられ
取り返しのつかない禍根を残すところでした。
我々が責任をもって国までお送りいたします」
『王妃と七人の小人は馬車に乗り
隣国の王とともに
急ぎお城に戻りました』
仮面の王「まっておったぞ!さあ薬を!」
王妃「はい!」
隣国の王「りんごをそのまま食べれば
解毒の効果が得られます」
『王妃様は白雪姫にりんごを食べさせました』
白雪姫「げふっ」
『間に合いませんでした。
王妃様の健闘むなしく
白雪姫は死んでしまいました』
王妃「どういうこと!?話が違う!!」
『王妃様は隣国の王に食ってかかりますが
どうにもなりません。
生ある者は必ず死に、死んだ者は生き返らない。
それがこの世界の摂理、
白雪姫にはそれが早くが訪れたということなのです』
王妃「お願い!目を開けてよぉ!!
死なないで!死んじゃだめぇ!!」
幕は下りる。
「白雪姫」の回は以下の資料を参考にして書きました。(敬称略)
・吉原高志 吉原素子 (「吉」の字は上の部分が土のもの)
「ベスト・セレクション 初版グリム童話集」
172ページから188ページ
白水社
・吉原高志 吉原素子
「初版グリム童話集2」
60ページから72ページ
白水社




