白雪姫 1
語り部(院長)
『昔々あるお城にとても美しい王妃様が住んでいました。
暖炉の傍らで王妃様はもうすぐお生まれになる
御子のための産着を繕っています。
雪の降るとても寒い夜のことでした』
王妃(妹)「まあ、この国で雪が舞うのはめずらしい、
空はまるで銀の海。
どうか、この白雪のように白く輝く美しい肌と
夜のような黒く長い髪、
そして雪解けの陽のようなあたたかな心を持った
すばらしい子になりますように」
『王妃様は御子の幸福を心から願い、七年の月日が流れました。
王国は建国祭を間近に控え、城内も城下も
賑わいを見せているのというのに
玉座の間で王様と王妃様が言い争いをしています』
仮面の王「お前はいつになったら男児を生むのだ
あれからもう七年も経つのだぞ」
王妃「そのように仰いましても
子は授かりもの
神以外にはどうしようもありません」
『王様はいつも仮面で顔を隠していて
仮面の王と呼ばれていました。
以前は王妃様と並ぶほどの美男子だったのですが
戦で全身にひどいやけどを負ってから
ひきこもりになり、かたくなにお城から出ようとしません』
仮面の王「その神の不興を買っておるのは
お前の素行が悪いからではないのか?
近頃は鏡に独り言を唱っておるようではないか。
我が妻ながら不気味で仕方がないぞ」
王妃「それは、男児が生まれぬなら
せめて身綺麗にして
陛下のご威光を高められるようにと…」
仮面の王「美しかろうと威光があろうと
世継ぎがなければいずれ国は亡ぶ
そうならないために
私は没落した貴族のお前をわざわざ娶ってやったのだ」
王妃「それは…承知しております…」
『王妃様は貴族ではありますが、
とても貧乏な家の生まれで、
地位やお金を失うことを思うと
怖くてたまらなくなるのでした。
争いを聞きつけて大臣がやってきました』
大臣(院長)「国王陛下!王妃陛下!
お二人ともおやめください!
国が一つにまとまろうというこの時期に」
仮面の王「こやつが男子を生まずに
まとまりを乱すから言っておるのだよ。
世継ぎが生まれないでは
臣下にも民にも面目が立たんからな」
王妃「出来るものならとうにやっております!」
仮面の王「まったく、見た目が良いから
まだ使いようがあるものの
これで醜ければとっくに離縁しているぞ
この役立たずが」
大臣「陛下!それはあまりにひどすぎるお言葉」
『仮面の王が悪口を吐き捨て
玉座の間を出て行くと
王妃様は泣き崩れました』
王妃「うぅ……ここまで言われても
ただ耐えるしかないのですか…」
王妃様が嘆いていると白雪姫が入ってきました。
雪のような白い肌と夜のように黒い髪を持った
とても可愛い女の子です。
白雪姫(少女)「おかあさま、
なぜ泣いておられるのですか?
おとうさまと何かあったのですね」
王妃「ああ白雪姫、あなたには関係のないことです」
白雪姫「おかあさまの事で
わたしに関係のない事などありません
どうか聞かせてください。
わたしに出来ることならなんでもします」
王妃「まだ七つだというのに、
そのような気の遣い方が出来るのですね。
私は嬉しいですよ。
その気持ちだけで十分です」
白雪姫「私にできることは何もないのですか?」
王妃「大丈夫です、あなたは
自分のことをしっかりとやりなさい」
白雪姫「そう…ですか」
『白雪姫は小さな肩を
しょんぼりと落として去って行きました』
大臣「王妃陛下、耐える必要はありませぬ
私に考えがあります」
王妃「考え…とは」
大臣「建国祭の式典に欠席すると言えば良いのです。
陛下は普段、城の外には
意地でも出たがりませぬが
王妃陛下が欠席するとなれば話は別、
建国祭には王族が誰か必ず出なければなりませんから
陛下はイヤでも外に出るしかなくなります。
そうすればお考えも改まりましょう」
王妃「なるほど、それは良い考えですね
さっそく案を練ってきましょう」
『王妃様が部屋に戻ると
大臣はにやにやと笑い始めました』
大臣傍白
(やれやれ忠臣のふりをするのも飽きてきた。
そろそろ玉座に席替えといこうか。
その為にこの二人の仲違いを利用しない手はない。
隣国との手引きも済んである。
まあそれも後でご破算にするのだがな。
みなを互いに争わせて
おいしいところは独り占めにするというわけ。
せいぜい国をかき回させてもらおうか)
『王妃様は自分の部屋に入ると
抽斗から宝石のあしらわれた
きらびやかな手鏡を取り出し
問いかけます』
王妃「鏡よ、この国でもっとも美しい者は
この私であろうな」
鏡(院長)『もっとも美しきもの、それはそなたなり』
王妃傍白(これで良い、
私がいちばん美しくある間は
王妃でいられる。美しくある間は…
ふふふ…私は美しい、そして陛下は醜い。
これで困らせてあげましょう…)




