第二十一話 勇者は順調に塔を上がっているようです(無自覚)
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勇者はスライムがどんだけ嫌いなのかが観察してて解った。
先ず、スライム克服への道の第一歩目のゲル状の物に触るという試練で躓きやがったんだ。
勇者ェ……。
次に半日掛けて触ったゲル状のナニカを違う器に移し替えるという、なんか意味の解らねェ試練に躓きやがった。
たった30cm運ぶだけの簡単なお仕事だっつゥのに、勇者はそこで気を強く持てずあっという間に気絶しちまったんだ。
勇者ってレベルじゃねェかもな、下方修正的な意味で。
ただアレだな、見ている二人も若干面白がってるのか真剣なのか、勇者の暴走を止めずに見てるんだよなァ。
「ま、見てるコッチが面白ければ良いか」
「だね!」
「何時の間に俺の側に?」
「ついさっきだよ!リアの体調の報告をしてきてって紅梨に言われたんだよ!」
「……体調は回復してたかァ?」
「順調に回復してて、明日には熱も平熱まで下がってるはずだから安心して仕事してって言ってたよ!」
ほォ、そりゃあ良かった。
一応毎日見舞いに通ってたんだが、リアは俺の前じゃあしんどいのに元気なフリしやがるからキチンと把握出来ねェんだよな……。
俺に気なんて使って欲しくねェんだけどなァ。
「そういや、なんでお前ずっと此処にいるんだ?お前の仕事あるんじゃねェのかァ?」
「ううん。僕は昨日のうちに全ての仕事を終わらせたからね!!」
「ソレは今日の仕事ではなく昨日の仕事なんじゃねェのか?って疑問が浮かんできたんだが、其処んとこどうなんだ?」
「文官に普通にこうやって聞いてみたら、大丈夫ですって言ってくれたからね!!」
それは普通に聞いた、ではなく魅了したっつゥんじゃねェのかな?
なんというか、その胸を強調しているポーズを止めて欲しいもんだな。
胸の下で腕を組んでいるから胸が強調されてヤバイな、うん。
それにしても最近リアやレイナール以外の女性魔族とか見ても殆ど何も感じなくなっちまったんだよなァ。
以前なら何かしら感じてはいたんだが、あの二人が積極的になってから美少女で有るはずの女の子相手に「へえ、うん、可愛いね」程度しか感じなくなった。
例えるなら周りの友人達が「あの先輩美人だぞ!」とか言ってるの聞いて結構ワクワクドキドキして見に行ってみたらそんなでもなかったみてェな感じだな。
「レイナール、あんまりそういう下になにも履いていない様な服着るな……」
「ん?どうして?」
「変な目で見てくるヤツが増えんだろォが。ただでさえウチの兵士共はリアとお前の二人共を見て興奮してやがるっつゥのに」
モチロンそのハァハァしてた兵士共は俺が説教した。
右アッパーから始まる説教術からの踏み抜きに繋ぐ説教術でな。
其奴らはその後リアとレイナールを見かけると震えていたって話をシアとユリアに聞いた。
つかユリアもシアも物凄く可愛い部類に入る筈なんだが、兵士共はアイツ達見てもなんでか何にも反応しねェんだよな。
「知ってる?旦那。あの二人共両方鍛錬がきついことと着ている服もローブとかで色気が無いって皆に言われてるらしいよ!僕も激しく同意だよ!服装にこだわらないのは女の子としてどうなの?って思うしさっ!」
「……へぇ、そうなんですの」
「あ、あれれ~?なんでユリアっちの声が聞こえるのかな?僕の耳可笑しくなっちゃった?」
「……別に可笑しくなってない」
「今度はシアの声だ~。おっかしいなぁー!あ、あはははは!」
……現実逃避してやがんな、レイナールのヤツ。
気付いてたんなら止めてよって顔してっけど、俺アイツらの気配察知出来なかったからな?
いや、マジで。
つかこのアイコンタクトの所為でお二人さん余計に切れているが大丈夫なのかァ?
「……少し借ります」
「と、言うわけでご機嫌よう葵様!」
「旦那ぁああ!助けてぇええええ!?!」
……ご愁傷様だ。
俺としては助けたい気持ちは山々なんだが、あの鬼気迫った顔している二人の顔を見ていると足がすくんじまってなァ。
「俺は、レイナール。お前の生きて帰ってくるのを信じて待ってるぞ……っ」
「……何をしてるの?」
「あ、飛鳥か。いやァさ、レイナールが二人いるのを知らずに要らんこと喋りまくって連行されていくのをヒロイン風に見送ってみただけだぜ?」
「……仕事しろ!駄目魔王!!」
「ガフゥ!?」
……コイツ防御力完全無視で殴って来やがった!?
一応竜の尻尾でビンタされても殆どダメージが通らない程度の防御力を誇っていた筈なんだが……。
コレがもしかして噂のギャグ補正っつゥヤツかァ……?
「お、おま、グーパンはねェだろォが……」
「なら平手の方が良かったの?」
「い、いや、どっちも普通は侍女が主にやって良いことじゃねェからな……?」
……痛ってェな。
取り敢えず早く仕事終わらせてリアの様子を見に行くとするか。
回復してるつっても心配なのは心配だからなァ。
○
……っは!?
まさかの夢にまでゲルが浸食してきたぞ……。
「……あ、起きたんですね」
「あ、うん。情けないところ見せてごめんな」
「……大丈夫よ。情けないっていうのは知ってるわ。スライムの大群に襲われてきたときのを見てたからね」
「う、うぐ」
「ま、それでもそれを補えるような良いところは沢山あるんだし、其処まで気にしなくても大丈夫よ」
「……ッチ」
「(ドヤ)」
……ヤベェ、姫さんが此処まで言ってくれるなんて泣けてくる。
アレだな、何というか、俺は今超絶に猛烈に感動している!!
「……って、何で睨みあってんだ?」
「別に何でもないですよ」「何でもないわ」
それにしてもこの塔高すぎるだろ……。
いくら何でも頂上までが遠すぎるし、登るのが面倒くさくなってきたなァ……。
なんだかんだで60階位登ったんだが。
○
そういえばあの塔の百階層あったんだよなァ。
俺の場合は上まで見上げて嫌になったから壁をよじ登ったのを覚えている。
懐かしいなァ、コンチクショー。
「……にしても書類が減らねェな、おい」
「あ、それ全部レイナール様の分ですよ。昨日、ウチの部署の一人が誘惑されたみたいで」
「……ほうほう、報告有り難うランド」
文官のランドは12歳の少年だ。
実はムゥに片思いしてると噂で聞いたんだが、真相は定かではない。
だが、もしそれが本当だとすれば、俺は全力で応援するだろォな。
アイツもそろそろ恋人の一人や二人いていい年だろォしな。
ま、俺は高校になっても彼女の一人もいなかったがなァ。
「じゃ、その書類ども全部レイナールの机の上に置いてきてくれや。俺はリアの見舞いにいかなきゃならねェんでなァ。あ、ついでにレイナールのサボりにGOサイン出した文官に説教するから宜しくって魔王が言ってたって言って置いてくれや」
「あ、はい」
「ンで、ついでに前頼んだ物が出来たのか聞いておいてくんねェかな?」
「了解です!」
……ま、こんなもんだな。
あとはレイナールが文句を言いに俺の部屋に来たら、擽りおしてやろう。
俺は爺さんにやられてガチで死にかけたからな……。
くすぐるって実は何だかんだで一番拷問とかに使えるんじゃねェかな。
「……それにしても、アクセサリーって作るの中々に面倒だなァ、おい」
レイナールやユリア達に防御強化の魔術を掛けたアクセサリーを持たせようと思い作っているんだが、中々に難しい。
因みにユリア達隊長達にはブローチ、レイナールとリアには指輪を渡そうとしている。
隊長は全員何故か皆女性だからな
更に杖代わりに出来る優れものになる予定だ。
あと、状態異常をレジストする魔術も掛けている。




