四十六話、乱入
朱里をいなしながらも、少しずつ兵士を倒していく。一人、また一人、と思ったら朱里に阻まれる。倒そうとすると朱里が確実に阻害するので、思っていた以上に骨が折れる作業だった。
「せいっ!」
少し高めの声が部屋に響く。それと同時に朱里の剣も振るわれる。俺が兵士を倒すほどに、鋭くなる剣筋。人殺しをさせたくないほどに愛してもらっていることに感無量になると同時に、なぜ俺が朱里のために人殺しをしてはいけないのかという疑問感が何時まで経ってもつきまとう。それは、疑問点という心の中の靄となって残るが、戦闘のじゃまにならない程度には、心の隅に押し退ける。といっても、このままじゃ埒があかない。すこし、剣に入れる力を強くして……
「仕方ねぇっ!」
かけ声とともに、俺は気絶させるつもりで朱里に剣を振るったが、
ガキッィ!
朱里の剣に阻まれる。そして、もう一度剣を降ろうとしたときに、更なる進入者がやって来た。新たなる人は朱里と違い、派手な登場はしなかったが、着実に門から入ってきていた。愚鈍な王たちは気づかないが、確固たる意志を持って、こちらに向かってきている。その速度は少しずつ加速している。誰なのかがわかるほどではなかったが、なぜというのを頭の中に残す。
そんな合間にも、俺と朱里は剣と剣をぶつけあい、貴族や王は、部屋の隅で縮こまっている。一度逃げ出そうとしたが、俺がうまく剣の運びを調整し、出ることが出来ないことを、しっかりと証明してあげた。その貴族は、剣の錆とはなってなく、部屋の隅で縮こまっている人の中でも、いっそう滑稽に怯えてた。
俺たちの剣と剣のぶつかり合いが数を増すごとに、すこしずつ進入者も近づくが、こちらの剣と剣の決着はなかなかつきそうにない。いくらぶつかり合っても勇者補正のおかげかどちらの顔にも汗一つなく、朱里はその凛とした顔で、誇らしげに剣を振るっている。完全に高嶺の花なのだ。彼女とつきあうことが出来てよかったと、しみじみと思うとともに、なぜ彼女と俺は闘っているのだと、もさらに自問する。結局思考がループしていると理解し、剣と剣に考えを戻す。
無駄な思考をしている間に、少し劣勢になっていたらしい。
と、同時に進入者が入ってくる。思ったよりも速いスピードだ。そしてこちらに来て……
「せいっ!!」
朱里と一緒にいた男だった。カイルと言ったか、そいつが、今俺に剣を振るってきた。こんな奴どうでもいいので剣をはじく。そして、弾いた剣は宙を舞い……
朱里の首へと、吸い込まれるように刺さった。