四十一話、鼓舞
朱里の目的が俺の殺害と聞き、朱里と話たいながらも、早めに話を切り上げて部屋に戻った。
悩む。とても悩む。
この街を破壊したいという意欲は前にも増して高まっている。正直はじめの街と同じくらい壊したい。何故世界は俺から朱里との時間を奪うのか、とても不思議になった。そして、恨んだ。怨んだ。
元の世界で朱里と生きたい。逝きたい。行きたい。往きたい。活きたい。様々な感情がこの四文字に詰まっている気がした。なぜなら人の始まりは生で、人の終わりは逝だから。逝には祈れる。祈るという文字がある。祈るんだ。終わりに。
徒然と意味のないことを考えているなと、思考の中で自嘲する。嘲る。ちっぽけな存在だ。勇者補正なんか有ったって、俺は昔となにも変わらない。自分の日々を手にすることは難しい。人生とは理不尽だ。
「ご主人様……?」
俺の思考が長すぎることに気をかけたんだろう。ソラがこちらに視線を投げかけてくる。
「あぁ、大丈夫だ。心配かけてすまんな」
正直不安定だ。大丈夫とはお世辞にも言い難い。一つため息を漏らし、今後について憂鬱となった。
「それならいいんですけど……」
ソラの声は、俺に届いたが、思考の渦にかき混ぜられ、明後日の方向へと去っていった。
といっても、俺にやることなど旅の準備と破壊くらいしかない。元の世界の技能などこの世界と目的を照らし合わせるととてもではないが使えないものであり、わざわざそれを使おうという時間も無駄に感じられた。要するにやることがない。いっそ、街を今から壊しにいくのも一つの手だろう。そう思うほどだった。だが……壊すときの朱里の表情が脳裏に浮かぶようで怖い……
どうしようもない八方塞がり。戦闘では機転で突破できるのも、生活では成功か失敗なのかもわからず、どうすれば成功にいくなんて理論も確立されていない。
もやもやする。うずうずする。とてもではないが、宿屋でのんびりと過ごす気分ではない。
「仕方ないか……」
行こう。街を壊しに。なぜなら俺は壊す勇者<カタストロフィプロタゴンスティス>なのだから。というかさ、この二つな長いよな。誰か変えてくれねーかな。
傍らにはソラ。眼前に広がるは、街の外壁。その奥にうっすらと荘厳な城が見える。城とは、王族の権威の代えでしかないと、今更ながらに気づく。だが、そんなこと気に考えても仕方ない。
俺は闘うのだ。朱里と、自分のために。未来のために。この憎き世界に向かい。これは通過点ではない、新たな始まりだ。そして、この街を終わりへと導くのだ。
始めよう。終わりの始まりを、破壊の宴を……
「ready?」
最高に昂ぶった自分に向かい、鼓舞した。