四十話、束縛
「朱………………里……?」
声で朱里だという確信は持っている。会ってから今まで延々と、永遠に想い続けた少女の声を忘れるわけはない。
「なんで、博信くんがここに……?」
「朱里こそ、何でここに……?」
双方疑問しかでてこない時間。それを打ち破ったのは……
「この方が朱里さんですか……?」
「おい、アカリ、こいつは誰だ?」
各陣営の、仲間の言葉だった。
「あぁ、そうだ」
と、俺はソラに答える。
「この方は、博信で、私の彼氏です」 と、朱里は、朱里の傍らにいるゴツい男に向けていった。その男は筋肉隆々で、いかにも脳筋風だ。背中には斧があり、その斧の大きさは、かなり大きい。それを振るわれた人間が、いとも無惨な死体になることは、直ぐわかった。
「そうか、こいつがアカリの彼氏ねぇ……」
俺をじろじろと舐め回すような目で見てくる。正直苛立つ。
「朱里…………」
といっても、こんなところで力の片鱗を見せるわけにもいかないので、殺すという選択肢を除外し、朱里に懇願する事にする。
「えぇ、カイル。止めて下さい」
それを感じ取ったのか、朱里が、筋肉隆々の男を、止めるような発言をする。そして、男の名前はカイルというらしい。
「あぁ、すまんな」
カイルは謝った。俺も別に止めてくれればどうという事もないので、カイルに向けていた意識を別の方向へ逸らす。
「というか、本当に何で朱里はこっちに来たんだ?」
「よくわからないんですけど、この国の王様が言うには、転移魔法で……しかも奴隷になる魔法をかけられて、逆らうことも……」
「勿論勇者様は好意的にこの旅についてきてくださるんですよね」
朱里の言葉を遮る様にカイルが割ってはいる。成る程、奴隷の魔法か。何で俺を召還した王様がかけなかったのかが気になるが、大方威圧感で恐縮させてから、ゆっくりと奴隷の魔法をかけるつもりだったんだろう。条件によって魔法のかかる効果の大きさは変わるからな。でもさ、俺の彼女に奴隷の魔法をかけた王様を……いや、その親族全員を……いや、その世界に住むものを……俺は許すつもりはない。さらなる復讐の念が燃え上がる。
「あっ、そうでした。はい。王様に、魔王を殺した勇者を殺す旅に行けと言われてるんです……その勇者は、勇者らしからぬ行動……街を壊し、罪もなき人々を殺し尽くす極悪人らしいので、それが本当ならとっても悪い人なので……仕方なく殺しに行く旅に出ることになったんです……幸い私は勇者補正があるので……」
え、ちょっと? 俺王から追われている大罪人? まじか。他国から襲われるとは予想外だぜ。というか……朱里の旅の目的は……俺の殺害!?
出そうになる驚愕の悲鳴を俺は何とか押さえた……
そして、これから起こりそうな波乱について、少し胃が痛くなった。




