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[第5話] もう一度、好きになる

東京での生活が始まって、数日が経った。

雪乃の部屋で過ごすことにも、少しずつ慣れてきた。

雪乃が仕事に出かけるときは、俺も一緒についていく。会社まで一緒に行く。

そのあとは、東京の街を散策していた。

渋谷や原宿をぶらぶら歩いたり、店に入って服を眺めたり。

見たことのない店や建物がいくつもあって、歩いているだけでも飽きなかった。

周りの人間には俺の姿が見えていない。

人混みの中を歩いていても、誰かに気づかれることはなかった。

幽霊になってから、こういうところは便利だと思う。

ただ、街を歩いていると、ふと自分が死んでいることを思い出す瞬間もあった。

夕方になると、雪乃の仕事が終わる時間に合わせて会社に戻る。

そして、一緒に帰る。

そんな生活を何日か続けていた。

ある日の帰り道、雪乃がふと思い出したように口を開いた。

「そういえばさ」

「ん?」

「中学のころ、遊園地に行きたいって話してたの、覚えてる?」

「遊園地?」

少し考えて、思い出した。

確かに、そんな話をしたことがあった。

付き合っていたころ、どこかに遊びに行こうという話になって、遊園地の名前まで出した気がする。

受験勉強に集中するため、行かないまま卒業してしまったけど。

「ああ、あったな。結局行かなかったけど」

「うん。行けなかったね」

雪乃は懐かしそうに笑った。

「今から行くか?」

口にしてから、自分でも少し驚いた。

雪乃も意外だったのか、目を丸くしている。

「今から?」

「いや、今すぐって意味じゃなくて。休みの日にでもさ」

「ああ、そういうことね」

雪乃は少し考えたあと、頷いた。

「じゃあ、行こうか」

数日後、雪乃の休みに合わせて、俺たちは遊園地に向かった。

幽霊の俺が入れるのか、そもそも乗り物に乗れるのか。出発する前は少し気になっていたが、入り口を通ることはできた。

どうやら、そこらへんは問題ないらしい。

「入れたな」

「よかったね」

「いや、入場料とかどうなるんだろうな。俺、金持ってないし」

「……そういえば」

雪乃は少し困った顔をした。

結局、俺の分の入場料を払う必要はなかった。周りからは俺の姿が見えないのだから、当然といえば当然なのかもしれない。

園内を歩きながら、俺たちは乗りたいアトラクションを探した。

「これ、乗ってみない?」

雪乃が指さしたのは、ジェットコースターだった。

「お、いいじゃん」

そう答えてから、俺は自分の体を見下ろした。

……いや、よくない。

「雪乃、俺乗れないじゃん」

「あ……」

雪乃も気づいたように、ジェットコースターと俺を交互に見た。

「ごめん、忘れてた」

「ひどくない?」

「ごめんって」

雪乃は申し訳なさそうに笑った。

「じゃあ、俺は外で待ってるから。乗ってきなよ」

「いいの?」

「せっかく来たんだし、乗りたいだろ」

「うん。じゃあ、行ってくるね」

雪乃は列に並び、しばらくしてジェットコースターに乗り込んだ。

やがて、轟音とともにコースターが走り出す。

高いところまで上がっていき、一気に落ちていった。

雪乃の声は聞こえなかったが、乗り終えて戻ってきた顔を見れば、どれだけ怖かったかはわかった。

「どうだった?」

「怖かった……」

「じゃあ、乗らなきゃよかったのに」

「でも、楽しかったよ」

雪乃はそう言って笑った。

そのあとも、いくつかのアトラクションを回った。

絶叫系はもう嫌だと言う雪乃に合わせて、ゆっくり楽しめる乗り物にも乗った。

園内を歩きながら、昔の話もした。

中学のころは、こんなふうに2人で出かけることさえできなかった。

あのころの俺たちは、いつでも一緒にいられるような気がしていたのかもしれない。

でも、実際はそうじゃなかった。

卒業して、連絡を取らなくなって、気づけば10年以上が経っていた。

今になって、こうして一緒に遊園地に来ている。

不思議なものだと思った。

夕方になり、空が少しずつオレンジ色に染まっていった。

「今日は楽しかったね」

帰り支度をしながら、雪乃が言った。

「だな。思ったより遊べたし」

「また来たいね」

「じゃあ、また来ればいいだろ」

俺がそう答えると、雪乃は嬉しそうに頷いた。

帰り道、隣を歩く雪乃は、今日乗ったアトラクションの話をしていた。

俺はそれを聞きながら、今日1日のことを思い返していた。

中学のころ、2人で行けたらと思っていた場所。

あのころには叶わなかったことが、10年以上経った今になって、ようやく1つ叶った。

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