『電光石火』
「二人ともよくやった。奴が口を割るまで休んでいてくれ」
「やっと休める……」
俺は深い溜め息をついた。
「まあ、尋問は私がやるからそこまで時間はかからんと思うがね」
高槻はそう言って、冷たい笑みを浮かべながら尋問室へと消えていった。
(なんか高槻って人間味ないんだよな。血通ってんのかな?例えるなら爬虫類みたい)
◇
「なんか、ようやく一息つけるよ……疲れたー」
「裕、お疲れ様!」
「アンナもお疲れ!…飯、食いに行かない?カルボナーラが無性に食べたい」
「行くー!」
二人は近くのパスタ店に入った。
俺はさっきの戦いで決めた技の興奮が冷めず……
「いいか?アンナ。あの体勢から叩きつける技はライガーボムって言ってな。伝説のプロレスラーが……」
「はぁ……そうなんだぁ。パスタ冷めるよ」
アンナは若干引き気味でつまらなそうに聞いていた。
◇
後日。高槻が再び二人を招集した。
「二人とも揃ったね。例の武器製造工場の場所が特定できた。これから制圧に向かう」
「博士も?制圧なら、俺たち二人だけ?」
「私はバックアップだよ、現場には既に日本軍の精鋭二人が待機している。彼らの指揮下に入ってくれたまえ」
「軍のバディだね!工場は壊すの?」
「いや、出来れば無傷で手に入れたい。本部の命令でね、対ナノマシン弾の解析と、中国側の技術を調べ尽くしたいのだよ」
「場所は?」
「工場地帯の一画だ。」
◇
工場地帯の手前に着くと、二人の男女が待っていた。
「彼らが今回の助っ人だ。指揮を担当するアキラくん。そして元暗殺部隊の葵くんだ」
「アキラだ。よろしく頼む」
オールバックで精悍な顔立ちをした、カリスマ性を感じさせる筋肉質の男だ。
「葵よ」
スラッとした黒髪ストレートボブの美人だが、どこか冷ややかな顔してる。
アキラは俺とアンナを見て「なるほど」と言った。
「俺のことはアキラと呼んでくれ。二人のデータは見させてもらった。」
「私もアンナでいいよ!」
「私も葵でいいわ」
「あ、じゃあ俺も裕で……」
「改めて。アンナは俺と反対側で援護と狙撃。葵は潜入。裕は正面から突入してくれ。俺はここで指揮を執りつつ狙撃で援護する。狙撃は俺の専門でもある、アンナほどではないかもしれんが、期待に添えるよう努力する」
(指示慣れてるなぁ、ベテランっぽい。頼りになりそうだ)
「テロリストは逮捕?」
「いや、生死は問わん。だが、武器を手にしている奴は迷わず排除しろ」
アキラの雰囲気がガラリと変わった……この厳しい雰囲気がいかにもプロって感じだ。
全員気を引き締めたようだ。
「では、作戦開始だ」
俺はショットガンを装填し、配置へ向かった。
◇
各々が配置につき、作戦が開始された。
俺は工場の入口まで忍び寄り、中の様子を伺う。
広大な敷地内では、多くの人間が慌ただしく働いていた。
無線機のスイッチを入れる。
「突入はどうする? 一般人はいる? どーぞ」
『任せる。得意な方法で突入してくれ。中にはテロリストしかいないが、非戦闘員も混じっている。どーぞ』
「了解」
大きく深呼吸すると、入口付近で銃を構えていた戦闘員をショットガンで吹き飛ばした。
見張りがやられ、工場内がパニックに陥る。
「カチコミだ!」「どこの組織だ!?」「相手は何人だ!」「逃げろ! 巻き込まれるぞ!」
叫び声が飛び交い、非戦闘員たちが一斉に出口へと走り出す。
俺は入口の影に身を潜め、反撃の銃弾をやり過ごした。
逃げ惑う足音が遠ざかり、工場内に残るのは武器を手にした連中だけになった。
(……そろそろ、戦闘員だけになったか)
腰からフラッシュバンを2個抜き取り、中へと放り込んだ。
(なんか、この戦法ばっかだな)
爆音と閃光が立ち込める中、俺は一気に突入した。
見える範囲に敵は10人ほど。ライフル持ちはいない。
1人ずつショットガンで仕留めていく。
だが、4人目を仕留めた直後、至近距離からショットガンの直撃を受け、俺の体は大きく吹き飛んだ。
肉が弾け飛び激痛が走る。
戦闘員がトドメを刺そうと近づいてくる。
即座にむくりと起き上がり、ショットガンを至近距離でお返しした。
敵の間に戦慄が走る。
「こいつ、不死身か!?」「ナノマシン兵だ!」「対ナノマシン弾を用意しろ!」
取り乱す敵の声の中、通信が入った。
『ナイスよ。潜入するわ』
葵の冷ややかな声。同時に、俺の背後の戦闘員の頭が吹き飛ぶ。
アンナの狙撃だ。
『ヒット』
「助かったよ」
『アンナ! 逃げる奴の中に幹部やリーダーはいるか? どーぞ!』
アキラが状況を確認する。
『いないよ! どーぞ!』
『地下にもいないわ。代わりに武器庫を見つけたわ。幹部連中は2階ね』
葵の報告を聞きながら、俺は1階の残党を順調に片付けていった。
「……8! あと2人!」
叫んだ瞬間、残る2人の頭部がスイカのように弾け飛んだ。
アキラとアンナによる同時狙撃。
いつも思うけど近くで見るとグロいな。
『ヒット』
『ヒット。1階制圧か。早いな。そのまま二階の幹部たちをやってくれ』
アキラの指示が飛ぶ。
「了解」
もう敵は居なかったが、カチッという乾いた音。
ショットガンの弾が切れた。
即座に空のショットガンを捨て、腰の拳銃に持ち替える。
ショットガンの替えの弾倉忘れてた。
おかしいな、順調過ぎる。
体の調子もいい。
なのに胸騒ぎがする。
(こんな時って大体なにか不測な事態が起きるんだよなぁ…)
と自分のジンクスを思い出しながら階段を上った。




