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『罠』

初任務から訓練に明け暮れた。

その方が少女の事を忘れられたから。


訓練していて俺とアンナの弱点が見えてきた。


俺はとにかく射撃が下手。

ショットガンを使うようになってからは安定し始めた。

気づいてから俺は格闘を含む、近距離戦の訓練をひたすらやった。


逆にアンナは近距離戦が苦手のようだった。

体格が小さいからか、特に格闘戦を怖がった。

その代わり狙撃銃ではなくても射撃全般は神がかっていた。


近距離の俺、遠距離のアンナ。

俺たちの戦闘スタイルが決まった。


◇そんなある日、高槻から招集がかかる。


「2人とも揃ったね。以前から警察で追ってた、武器密造犯のリーダーの潜伏先が判明した。どうやらM市にいるようだ。工場を突き止めたいから生け捕りにしてくれ」


「リーダーは女ですか?」

「ああ、これがリーダーの写真だ、中国人らしい。凶悪な爆弾魔も一緒だとの情報だから気をつけてな」


「女か…気が乗らないな」

写真を見ると20代ぐらいの綺麗な女が写っていた。


◇輸送車でM市へ到着した俺とアンナ。


「……M市かぁ、あんま来た事ないな」

「M市と言ったらたこ焼きだよ!露店多いんだって!」


アンナは目を輝かせた。


「遊びじゃないんだぞ……。ま、いっか。少しだけね」


俺とアンナは聞き込みを兼ねて繁華街を歩き回った。


「裕!次あれやろ!」

「UFOキャッチャー?初期位置からズレてるから店員呼んでくる」


俺は店内の店員を探した。


「すいませーん、これ位置変えてくださーい」


声をかけた店員は、

「チョト、マテください。」


たどたどしい日本語を話していた。


「……中国の人?この女を知ってる?」


俺は写真を見せると、店員は一瞬固まり、視線がおよいだ。


「知りまセン。」


声も震えてる。怪しい。


「2、3聞きたいことがあるんだけど……」


と警察手帳をみせると店員は青ざめて逃げ出した。


「アンナ、手がかりだ!あの店員!」

「おっけー!」


アンナが店内でも容赦なく拳銃を発砲。

店員のベルトを弾き飛ばし、ズボンが脱げた店員は派手に転倒した。


ゲーセンの客が騒ぎ出す。


「やめてくれ! 私は何も知らない!(中国語)」

「素直に話した方がいいよ。このお兄さん、怒ると怖いの(中国語)」


アンナが流暢な中国語で詰め寄る。


「え?アンナ、中国語も話せるの?」

「うん!この人、北京訛りだよ。」


すぐに高槻に無線を入れた。


「博士、女リーダーって北京出身?」

『ああ、そうだが。何故わかった?』


「有力な手がかりを見つけました。アンナ、リーダーも北京出身だってよ!」


『念のため、そいつを確保してくれ』


 アンナは銃口を店員の股間に向け、さらに畳みかける。


「おやおやおや、この女と同郷? 怪しくなってきたね。話すか、ここを吹っ飛ばされるか選びな(中国語)」

「なんて言ってるか分からないけど怖い!」


◇高槻に男を引き渡し、判明した雑居ビルの地下に辿り着いた。


鍵がかかってないと分かると、ゆっくりとドアを開け、ライトを構えて突入する。

暗い上に人の気配がない。

それどころか機械音すら聞こえない。


――静かすぎる。


(罠の臭いがプンプンするな。最悪罠あっても俺なら死なないし、アンナは待機だな)

「アンナ、入り口で見張ってて」


「え? う、うん、気をつけてね」


歩く音がやけに響くな……と思っていたら、足元に何かが引っかかった。


(ん? コードか?)


思った瞬間、けたたましい警報音が鳴り響き、脇腹に鋭い痛みが走った。


「……っ!」


壁に仕込まれたボウガンの矢が突き刺さっていた。

毒でも塗ってあるのか、熱い。


すぐに矢を引き抜き奥へ急ぐ。

足元のコードを警戒して視線を落とした。

今度は頭の高さに何かが触れた。


視線誘導――。


(爆弾魔……頭良いな)


咄嗟に後ろへ飛ぶ。

だが、そこにはさらに別の仕掛けがあった。


 ――ドンッ!!


激しい爆発。威力自体は殺傷用ではない。

だが、詰め込まれていた釘や金属片が俺の全身にめり込んだ。


「いっっってぇぇッ!!」

肉が盛り上がり異物を押し出し、再生していく


『裕! 今の音は何!? 大丈夫!?』


無線からアンナの悲鳴のような声が飛ぶ。


「大丈夫!罠にだらけだ……!アンナはそこを――」


通信を返し終える間もなかった。


背後の闇から伸びてきた腕に口を塞がれ、鋭利な刃物が俺の喉を深々と切り裂いた。


『裕?何があったの?!裕!!』


アンナの無線が聞こえるがそれどころじゃない……


「あ……ぐっ……!ごほっ!」


喉を裂かれ、俺は口から大量の血泡を吐き出した。

激痛と窒息で視界がボヤけ、膝から崩れ落ちる。


(……やばい、意識が……!)


遠のく意識の中、俺は苦しまぎれに背後の奴の足を払い、転倒させた。

それと同時に、


――パンッ!


至近距離で放たれた弾丸は眉間を貫き、後頭部脳を突き抜けた。

脳をかき回されるような激痛。


「うげぇぇぇ!!」


俺は吐瀉物を撒き散らしながら傷口を押さえて後ろに倒れ込んだ。


犯人の男が忌々しそうに中国語で何かを呟き、闇の中へと消える。


「おぇっ……!……ま、待てぇ……!」


朦朧としながらも暗闇に向けて数発撃ち返したが、手応えはない。


「……アンナ!ごほっ!犯人が逃げた!そっちへ行ったぞ!只者じゃない気をつけ――」


無線の直後、地上から一発の銃声が聞こえた。


――タァンッ!


「アンナ!」


俺は再生し始めた首を押さえ、何度もつまずきながら入口まで走った。


入口に辿り着くと、そこには頭から血を流して倒れている男と、銃を構えたままのアンナがいた。


「裕!」


俺の姿を見て、アンナがようやく拳銃を下ろした。


「アンナ、無事か!?……あぁ、仕留めちまったか」

「裕こそ大丈夫!?服が血まみれだよ!」


「……ああ、もう治った。平気だよ」

「よかった……」


「確保はできなかったな」

「撃たれそうだったから、咄嗟に……」


「仕方ないさ。博士に連絡しよう。中に手がかりがあるかもしれないし――」


俺はアンナの後ろを見て驚愕した。

確かに眉間を撃ち抜かれ、死んだはずの男が、まるでスローモーションのようにゆっくりと立ち上がった。


「え……?」

「え?」

アンナも後ろを振り向いた。


男は無言のまま、手に持っていたスイッチを押し込んだ。


(爆弾?!)

「伏せろぉ!!」


俺は咄嗟にアンナを抱き込み、覆いかぶさった。


直後、鼓膜を破らんがばかりの轟音と共に、視界が真っ白に染まった。


――ドォォォォンッ!!


凄まじい大爆発。

建物全体が崩れ、コンクリートが降り注ぐ。

俺たちの体は爆発の衝撃で吹き飛ばされた。


「うぅぅ……ん」


気づけば瓦礫に埋もれていた。

耳鳴りが酷い……

瓦礫の山から這い出し、下になっていたアンナを助け出す。


「アンナ!アンナ!大丈夫か?!」

「げほげほっ……うん。なんとか」


アンナが無事で安堵の息を漏らす。

「……そうか」


周囲を見回したが男は煙のように消えていた。


「誰もいない……証拠も全部吹き飛んじゃったね」

「ああ、一杯食わされたな」


アンナは煤だらけの顔で、崩落した地下室の入り口を見つめた。


「……アンナ。さっきの男、急所を外してたんじゃないのか?」

「まさか!私の射撃だよ?確実に眉間をぶち抜いたもん」


「そうだよな、アンナは俺と違って外さないからな」


眉間を撃っても死なない男。

爆弾魔。


「……ナノマシン兵、なのか?」

「……多分。……しかも私たちとは別で造られた」


「俺と同じ能力……再生型だったな」

「うん、敵に回ると厄介だね」


確実に俺より洗練されたナノマシン兵の再生型か……


「これからどうなるんだ?」


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