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『戦場』

◇K区の廃工場。


辿り着いたそこは、爆発と銃撃が飛び交う。

“事件現場”ではなく“戦場”と化していた。


女リーダー率いるテロリストたちと、中国マフィアが正面から衝突している。


最新兵器を手に入れたテロリストの火力は凄まじく、数に勝るはずのマフィアが若干押されていた。


混乱の中、スキンヘッドの2mの巨漢のマフィアのボスがこちらへ駆け寄ってくる。


「アンナ、遅かったな。見ての通りだ……。すまんが、うちの連中と共闘してくれんか?」


まさかのマフィアからの要請。

背に腹は代えられないといった顔だ。


「アンナ! 渡りに船だ、共闘しよう!」

「うん! じゃあ私は狙撃で援護! 裕は突っ込んで。……なるべく、撃たれないでね!」


「おう!」


短く返し、俺は銃弾が飛び交う激戦区へと身を投じた。


近くにいたマフィアたちが中国語で口々に叫ぶ。


「手を貸してくれるのか?」「ありがたい!」「こいつ、死神の仲間だぞ!」


中国語はわからないが、一人がたどたどしい日本語で状況を伝えてくれた。


「ナノマシン兵、何人かイテ、てこずってイマス……!」

「わかった、俺がやる! みんなに“ナノマシン兵は心臓が弱点だ”って伝えろ。あと、動ける奴3人ついてこい!」


指示を飛ばし、激しい銃撃の隙を突いて飛び出す。


(ライフル持ちは5人か。遠いな……)


そう思った瞬間、テロリスト3人の頭が立て続けに弾けた。アンナだ!


『あとは遮蔽物に隠れてて撃てない! 裕、撃たれないようにね!』


無線にアンナの声が飛ぶ。ナイスアンナ!


俺は瓦礫に隠れながら、残るライフル持ちへと距離を詰めた。

足元には敵味方の死体が転がっている。


「いいもん持ってんじゃん」

俺は倒されたテロリストの手から転がってたロケットランチャーを拾い上げた。


「ロケラン使う! 援護しろ!」


マフィアたちに声をかけ、一気に立ち上がる。


――ドォォンッ!!


発射された弾頭が轟音と共に着弾し、ライフル持ちを含むテロリスト4人を爆風が飲み込んだ。

これでライフル持ちはあと一人。


「よし、お前ら3人はここで待機……」


そう言いかけた時、今度は敵側からのロケットランチャーが俺たちを襲った。


凄まじい爆発。

俺の体は無残に吹き飛ばされる。


ひどい耳鳴りと痛み。

体がバラバラになりそうな感覚。

ナノマシンは即座に修復するが、いきなり大ダメージだ。

意識が飛ぶところだった。

頭がくらくらする。


……ついてきた3人は!?


視線を上げると、2人は既に文字通りバラバラになっていた。

残る1人は軽傷のようだ。


「立てるか! 早くここを離れろ!」

「ハイ……!」


男の手を引き、遮蔽物へ駆け出した直後。

先ほどまでいた場所が再び爆発に包まれた。

一箇所に留まらなくて正解だった。

そう安堵した瞬間、隣を走っていた最後の1人の頭が弾け飛んだ。


狙撃だ。


「アンナ! 敵にスナイパーがいる!」

『うん、わかってる! 今探してる……っ! 裕、どこかに隠れてて!』


スナイパーが俺を狙っているのがわかった。

隠れてても埒が明かない。


(こうなったら)


俺はわざとスナイパーに位置を晒した。

直後、衝撃と痛みで視界が歪む。

俺の頭が、敵のスナイパーに正確に撃ち抜かれた。

だがおかげで方向がわかった。


脳が揺れる激痛。

目眩と吐き気で俺は倒れながら、銃声のした方向をアンナに叫んだ。


「アンナ! 2時の方向だ!」

『わかった! ……見つけた、仕留めたよ!』


アンナのカウンター・スナイプが決まった。


だが、今の俺の立ち振る舞いで、敵のライフル持ちに俺がナノマシン兵であることが完全にバレた。


ライフル持ちの銃口が、俺に固定される。

俺は遮蔽物を捨て、動き回りながら一気に距離を詰めた。


『裕! 無謀だよ、隠れて!』


アンナの悲鳴のような無線。


1発目。躱した。


2発目。外れた。


ライフル持ちが落ち着いて3発目の狙いを定める。

だが、俺にはスナイパーに撃たれた時に閃いた確信があった。


――わざと撃たれて、隙を作る。


敵が引き金を引く瞬間、俺は心臓の前に左腕を突き出した。


ターーーンッ!


激しい戦場に、あの嫌な乾いた音が響く。


左腕に激痛が走り、対ナノマシン弾がめり込んだ。

だが、心臓は無事だ。


「――お返しだ!」


俺は至近距離からショットガンを叩き込んだ。


ズドンッ!


ライフル持ちの胴体が消し飛ぶ。


俺は休む間もなく、痙攣を始めた手でナイフで左腕に食い込んだ弾丸を無理やり抉り出した。


酷い激痛だが対ナノマシン弾が地面に転がり、再生が始まる。


『バカ! 撃たれながら撃つなんて……二度とやらないで!』

「ライフル持ちさえいなけりゃ、こっちのモンだ!」


気づけば、俺はテロリストたちの陣地のど真ん中にいた。

俺は落ちていたライフルを拾い上げ、さらに奥へと走り出す。


「懐まで入った! これから派手に暴れるから、援護頼む!」

『わかった、任せて!』


テロリストたちがアサルトライフルを乱射してくる。


何発も体に被弾し、血が噴き出す。だが、構わず俺も引き金を引き続けた。


銃声と爆音、悲鳴が入り混じる地獄絵図。


しかし、ショットガンで確実に仕留めたはずのテロリストたちが、のろのろと起き上がってきたのだ。


「……こいつらもナノマシン兵か!」


すぐにライフルに持ち替え、心臓を狙って正確に狙い撃つ。

対ナノマシン弾を撃ち込まれた敵兵は、激しく痙攣した後に今度こそ動かなくなった。


ナノマシン兵は、残り4人。


俺は血塗れの左手で、次弾を装填した。

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