復讐編 9
熟睡していた身体が揺さぶられている。身体に触れられている。…兄さんじゃない!一気に意識が覚醒する。
目を開くと同時に起き上がる。
寝ていても離さなかったナイフを片手に握りしめる。黒チーター君が目を丸くして私を見ている。
私の手は無意識のうちにナイフを振り上げて、黒チーター君の肩にナイフが…私の開いた目に呆然とした黒チーター君がうつり…。
黒チーター黒の左側にきっ先をずらし、なんとか回避した。…危なかった。私は、寝ぼけている時が一番殺気立つ。
「ごめんなさい。大丈夫だった?」
黒チーター君は一瞬の出来事に言葉が出ないようで固まってしまった。地面に突き刺さったナイフが、私が今した事を冗談にしてはくれない。
「ごめんね。とっさに反応しちゃった。」
前世から、不眠症気味である。あの親のせいで。
黒チーター君は、驚きと恐怖から我にかえると怯えた目をして後退りし始めた。…うん。ごめん。慌てて空気を変えようとした。
「えっとね。木の人が休める場所を教えてくれて、疲れたでしょ?ちょっとは寝れたかな?」
手をパタパタして、無害ですアピールしてみる。…今更ですが。
「…はい。あの、」
「…はい。すみません。」
謝る事しかできません。復讐を手伝ったが、殺しかけた事でプラマイゼロ。もうちょっと好印象を残したかったぜ。
空気が固まったように重くて、二人とも無言が続く。…なんか、話さなきゃ。…でも、なんて?…あー。嫌な汗が。
「ねぇ?ここで何してんの?お見合い?」
入り口の布をまくり上げて、若い女の顔が。
「っ!誰!?」
「いや、こっちのセリフ。子供たちだけで何入ってきてんの?いつもの事だけど、ここは肝試しじゃないっての!ダメよ〜。危ないからね。」
肝試し?危ない?顔に疑問が出ていたのか、女の人が説明してくれた。
「森の中の洞窟なんて子供たちにとっては絶好の遊び場だろうけど、ここには本が高く積まれているからちょっとでも崩したら、なだれがおきるよ?この前も遊び半分で倒して埋もれていたでしょ?あれ?聞いてないの?」
女の人の言葉に、部屋の中を見渡してみる。
この部屋の壁一面に本がうず高く積み重なっていた。それは、乱雑という言葉がピッタリで一定の安定と不安定が折り重なるように、ふらふらと天井近くある本の山、いや、本の崖。
「あっぶな!」
考えた事がそのまま言葉に出た。
「うんうん。だから肝試しはやめなさいって言っているのに。もう。」
いや、あなたが、こんなところに本の崖を作っているのも悪いのでは?洞窟に?なんで?
固まった空気を驚きと疑問でぶった斬ってくれた事には感謝しますが。
黒チーター君と、アイコンタクトをしてしまった。どうしようと目は、口よりも雄弁に語りかけてきた。…うん。どうしようか?




