復讐編 7
よし、脅しはこんなもんかな。
「後は、好きにして。」
黒チーター君を休ませる方が先決だ。仲間を殺された怒りと憎しみが、相手を殺した事で少し薄まり、後に残るのは。
「ここから、離れよう。」
黒チーター君を促す。私の脅しが効きすぎたのか微動だにしない男たちは置いて行こう。黒チーター君を殺しにきたような男たちの側にいては、心が休まらない。小さくうなづき歩き出す…が、チラチラとこちらを見上げてくる。ん?なんか、視線に熱がこもっているような?
歩き出して少ししたら、待ってくれと声をかけられた気がするが、全スルーして歩く…が、追いかけて来ようとしたので、黒チーター君の牙が夜の闇の中で光る。
仕方がない。黒チーター君に指で合図した。
暗闇の世界は、私たちを隠してくれる。
木の枝を、上手につかむ黒チーター君。私は背中に捕まり楽をさせてもらっている。私を振り返り、行くと目線で言ってきたので、首と肩の間の柔らかい部分をつかませていただいて、感無量になりながら黒チーター君は、肉球により枝を音もなく移動した。…幸せだった。
森を深く入り、静けさと血のにおいが遠くなった頃、黒チーター君は、私を下ろしてくれた。
暗闇の静寂。
黒チーター君が、うつむく。
私は、何も言わずに立っていた。
「…終わった。」
「うん。」
「終わったのに…なんで、こんなに。」
それ以上は、言葉に出来なかったらしい。
ガリガリと土を掘る前足から、血のにおいがする。爪がはがれてきているのだろう。
私は、黙って話を聞く。
「…両親を殺したやつを、殺したのに。なんで。…笑っていいはずなのに。…なんで。」
感情は、荒れ狂い、混乱して、自身を苛む。
「…うん。笑えないね。」
ポツリと言う。
「…殺したら、帰ってこないんだ。…父さんも母さんも。」
死んだものは、戻らない。復讐をして帰ってきてくれるものは、自身の苦しみだけ。
「帰ってきてくれないんだ。…わかってたはずなのに。…帰ってきてくれるはずないのに。」
黒チーター君のうつむく地面に、水滴が落ちる。
私は、黒チーター君に一歩ずつ近すぎ、警戒されない事を確かめながら、そっと背中を撫でた。
奪われた怒りと憎しみが、薄まれば、残るのは、悲しみと喪失感だけ。
誰にも埋められない空白。
私にできるのは、背中を撫で続ける事だけ。
地面に丸くなり、涙の止まらない顔を隠しながら、声をころしてすすり泣く。
その震えが止まるまで、私は、ただ、側にいた。




