復讐編 間話3
ちょっぴり残酷なところがあります。ご注意下さいませ。
「…なぁ、あの子は…俺たちを…。」
あまりにもあっけらかんと無邪気に言われた言葉の意味を理解できない。言葉よりも雄弁にその目はどちらでもいいといっていた。
獣の怒り狂った唸り声が聞こえてきて、じゃ後は若い二人で〜と振り返りもせずに行ってしまった。…捕まった俺たちをあっさり置き去りにしていく。唖然としたまま、言葉も発せられない俺たちを残して。
「…一人、って言ったよな。」
「…ああ、言った。」
言葉が続かない。でも、銀色の髪の子供には、善悪の垣根が薄かったように見えた。俺たちを捕まえる事も、そして、俺の首に噛みつき血をすする事にも、躊躇がなくて、当たり前の事をしているかのようだった。…だから、俺たちを殺す事にもなんのためらいもなく、虫を潰すのと同じように、やりそうな気がする。
「俺は、こんな所で死ぬ気はねぇ!なんで、あんなガキどもに殺されなきゃならねーんだ!」
幼馴染が、怒鳴り散らす時は怖くて仕方がない時。わかっている。こいつが子供に謝るなんて思いもしなかった。…謝ったところで、過去にした事は消えない。わかっている。俺も同罪だ。
「正当防衛、だと言っていた。俺たちが黒チーターの毛皮をはぎにきたから。」
「あ⁈だからってここで終わるなんて冗談じゃねぇ!まだ!まだ!まだ!俺は!」
大声を出し過ぎて、ぐぇっと胃から胃液を吐き出す。泥にまみれて、虫に食われても、生きようとする意思が消えない。ギラギラと貪欲な生への渇望が尽きる事なく燃え上がっている。
「なぁ、死んでくれよ。俺が生き残るために。お前が。」
顔を上げて俺を見つめる。強く、身勝手で、よどんた目から逃げたい。俺だって生きたい。でも、ここまでの渇望はない。
「……俺、」
俺が。…そこから、言葉は続かない。ただ、怖い。死ぬ事が。そして、幼馴染に死んでくれと言われた、切り捨てられた悔しさが、言葉を詰まらせる。
こいつのために、死にたくない。
そう思った。正直に。
「決まったかな?」
銀の髪の子供が、のんびりと戻ってきた。黒チーターを連れて。黒チーターの口元は、黒い毛でもわかるほど、赤黒い液体に濡れていた。
「一人だけだよ。さあ、どっち?」
黒チーターをなだめるように優しく撫でながら、俺たちにどちらかを生贄に選べと、残酷な事をいう。にっこりと笑いながら。
まるで、幼い頃に母に叱られながら言われた。
悪い子を食べていく、悪魔そのものだった。




