逃亡編 18
「ねぇ、どんな奴にやられたのか教えて欲しい。特徴とか、格好とか、体格とか知っている事すべてを話して。」
木の人を見上げてお願いする。木の人は、枝で顔を隠すのをやめて私と黒チーター君を心配そうに見た。
「…あの、ですね。あの。…ふ、復讐って怖すぎませんか?あの、お二人ともお小さいですし、あの、ここは穏便に…いきませんか〜?」
両方の枝先を擦り合わせるようにして、おそるおそる私たちに問いかける。
「何を言ってるの?」
本当に不思議。ここまできて穏便に生きていくなんて無理だろう。仲間が大切であればあるほど、憎しみと恨みは心を蝕む。私が兄さんを殺そうとした父をナイフで刺したように。自分が痛めつけられるよりも、大切な人が辛い目に合う方が、より苦しいのだ。
黒チーター君も、怒っている。仲間を殺された絶望とおいて逃げたという罪悪感が身体中にめぐっている。
これをくつがえさずに、穏やかに生きていくなどあり得ない。
復讐とは、死んだもののためにやるものじゃない。残されたものが生きていくためにやるものだ。
「黒チーター君が、復讐しなくてもいいっていうなら、私はいいよ。」
私の復讐じゃない。決めるのは黒チーター君。
「やる。全員、殺してやる。」
「だよね。殺しておいた方が、この世のためだよね。味をしめたら、何をするかわからないし。」
黒チーター君が首を傾げる。…かわいい。じゃない。
「殺すことに慣れてしまえば、また殺す。やり慣れれば、ハードルが下がる。…たぶん、この森は、町から遠く声が届かない。いい場所だと知られてしまえばここは何回も使われる。」
木の人を、ジッと見つめる。この森が、血に濡れる。それを許せるのかと。
「…あの、あの、それは…いやです。汚くて不潔で臭くて腐敗ガスがいっぱいの人たちをここに埋めるのはやめてほしいのですが、それ以外なら協力させてくださいぃ〜。」
…やっぱり、口が悪いな。木の人。
「あの、ですね。黒チーターさんたちは、あの、ひどく抵抗なさって、4人の腕や手を噛み付いていました。その抵抗が激しくて…あの、全員で。」
それ以外は、言葉が続かなかったが、その後は聞かなくても想像がついた。すぐに殺せると思っていた黒チーターからの抵抗に、4人は腹を立てた。そして。毛皮が取れなくなるぐらいの暴行を加えたのだ。…胸糞悪い。
黒チーター君は、ガリガリと土をかく。あれ? 黒チーター君の後ろは?
埋められて、掘り起こされた男の顔が。また土に埋まりかけてる。…あれ?死んでないよね。
私は、慌てて黒チーター君を落ち着かせた。くしゃくしゃに撫でて、くすぐって、ワンコにしたかった事をしまくった。役得だったのは言うまでない。
うふふ。




