逃亡編 14
こうゆう男は、怒鳴れば言いなりになると思っている人が多い。自分より力がなければ容赦なく怒声を浴びせて萎縮させる。
反対に自分より立場や力が強いものには、媚びることを平気でやる。
「ねぇ、教えてほしい事があるんだけど。聞いてもいいかな?」
下手に出てみる。返事は当然だけど反発しかない。
「ああ!何言ってやがる!お前らなんかに殺されるなんか冗談でも言わせねぇ!ぶち殺してやる!この獣人野郎が!」
…はぁ。つまらない返しにため息しか出ない。黒チーター君にいいよと伝える。その言葉を待っていたらしく、すぐに男の落ちた穴の側にある土に足をかけた。ババババと後ろ足で土をかけ始める。
男はなんとか穴を登ろうとするも、粘土質な土に足を取られて滑っている。そこに新たな土が降ってきて頭からかぶってしまう。
「ぶっ!何をするんだくそガキども!」
頭から土をかぶってドロドロ。汚い。
「何って聞きたい事があるんだけど。話してくれないみたいだから、もういいかなって。」
もう一人は捕まえているし、怒鳴るだけで話もできない害虫など処分しなきゃいけない。両親と同じように。殺される前に、殺さなきゃ。
「こいつは、もういいよ。やっちゃおうか。」
黒チーター君は、憎しみと怒りに我を忘れているらしい。…掘り出した土を、どんどん穴の中に入れて男がどうなろうが、かまわない。もちろん、私も。
「は?いや、何を?なんたんだ!ガキどもやめ!冗談だろ!?こんな事してどうなるか!」
「どうなるの?どうにもならないでしょ?あんたはいなくなる。処分完了だよ。」
「…!嘘だろ!?俺は殺しちゃいない!何にもしていないのに!」
「よく言うよ。獣人を蔑む態度と殺す事への躊躇のなさ。…あんた、はじめてじゃないだろ。」
穴のふちにしゃがみ込み、土だらけの汚い顔をながめる。弱いものを痛ぶってきた傲慢さは、言葉にも態度にも滲み出る。…こうゆう男は、自分がやられる側になる事など考えもしない。追い詰められてはじめて認識するのだ。
「殺される側になってみるといいよ。じわじわと苦しんで。もう抜け出せないから。」
胸まで埋まって腕を持ち上げて溺れているよう。
「なぁ、冗談だろ?獣人なんかすぐ増えるんだから、なぁ!出せよ!今なら許してやるからさ!」
その言葉は、黒チーター君の怒りに油を注いで燃えたぎらせる。あーあ。
神様は、人を罰しては、くれない。だから自分でやらなきゃいけない。
だって、これは正当防衛だから。
黒チーター君が、穴を埋めて、男の頭を踏みつける姿を、私は、黙って見ていた。




