逃亡編 13
私に血を吸われて失神した男の手首と足首を伸縮性のあるツタで縛る。血をけっこう思い切り吸われた身体は力が入らないと思うが念のために。逃げられてたら、面倒だし。
落とし穴に見事に引っかかってくれた男の方にいく。私の短い足でテクテク歩く。黒チーター君が後ろをついてくる。…ちょっぴり距離をとりながら。うん。分かってる。いきなり噛みついて血をすする幼女。…怖いよね。…あれ?自己紹介もまだじゃないか?思い出して黒チーター君を振り返る。ビクッと飛び跳ねそうな…いや、飛び跳ねてたな。…うん。後にしようか。そこまでビビられるとちょっぴり凹む。
凹んだまま黒チーター君と歩いて行くと、男の大声が聞こえてきて、眉をしかめる。
出せだの何をするだのぶっ殺してやるだの聞くに耐えない暴言ばかり。
本当に自分の状況が把握出来ていない。
自分が狩る方じゃなく、狩られる方になったのに。クスクスと笑いがこぼれる。どうして気がつかないのだろう。今から痛めつけられるのは、自分なのだと。…愚かだ。自分の優位を疑っていない、疑う事を考えられない者は。
カサリカサリと草を踏む音が聞こえたのか、男がなおさら大声を上げた。
「おい!どうなってんだ!さっさと引き上げろ!ああ!…チクショウ!どこのどいつだこんなのを作ったやつは!」
ダンダンと癇癪を起こした子供みたいに地団駄を踏む。…うわー。ドン引き。
「はい。私。」
どこのどいつだと言われたので答えてやる。罠を仕掛けようといったのは私。九割作ってくれたのは、黒チーター君。…いや、早かった。こんなに早く穴を掘れるものなのかと感心した。
「このくそガキ!さっさと出しやがれ!」
真っ暗の穴の中で、ランプの光が光っている。だがその光だけでは、私たちの影しか見えなかったらしい。子供と判断したのは声かな?それにしても。
ふふっと笑い声がもれる。生き物たちの音がない森は静まりかえり私の声が男に届いた。
「…何がおかしい!こんな事しといて!俺はガキだろうが容赦しねぇぞ!」
まだ、強気な発言が出てくる。愚かなのもここまでくると滑稽だ。
「ふふ。正当防衛でしょう?あなた方は毛皮を狩りにきた。…殺してでも。でもこっちも殺されたくないから。」
黒チーター君を振り返る。憎しみと怒りに駆られて爪を出して地面をつかむ。牙を剥き出しにして金色の瞳は瞬きを忘れて男を見つめる。
「殺しに来たんだよ。」
その答えが理解出来なかったのか沈黙した男。
今すぐにでも引き裂きたい黒チーター君をなだめるために鼻先を撫でた。…もうちょっとだけ待ってね。もう少しだよ。




