逃亡編 7
猫にまたたびを与えたみたいに、ゴロゴロと喉を鳴らし、スリスリと私に身体全体を擦り寄せる。
くぁー!ああ、もう。可愛い!
身悶えしながら歩く。黒チーターをお姫様抱っこして。最初は、前足を持って歩こうとしたら猫のごとく黒チーターが伸びました。力があっても歩けるはずもなくお姫様抱っことなりました。
すごいな。私。満たされたお腹は、力をつれてきてくれておっきな黒チーターでも全然平気。
介抱しなきゃいけない。けっこう血を吸ってしまったから。食ってしまったからには、責任をとらなくてはなりません。それが、吸血鬼の矜持。
てくてくと一生懸命に進んでいると、ん?なんだか軽くなってきた…ような気がする。あれ?手に触れているお尻の毛並みと肩の毛並みが薄くなってきたような?
私の身長では、お腹の凹んだ部分から前を見るより他に方法がない。だから、変化に気づくのが遅れた。
黒い毛並みが、どんどん消えて、スラリとした人の足に変わる。えっ待って。どうゆう事?
歩く事も忘れて、人の姿になっていく黒チーター(?)を見つめる。
顔から毛が消えて、髪の毛に。耳は黒チーターのまま。長いしっぽも私に絡みついたまま。
全裸の10才ぐらいの男の子が、私の腕の中に。
……。獣人さんでしたか。そうですか。
空白になる私の思考。獣人さんは、完全な獣の姿にもなれるのか。あーそうですか。って。
教えてくださいよ!そうゆう事は!
誰かに向かって文句を言う。この世の常識。私の非常識。無知は怖い!それに、腕の中にいる男の子は、軽い。若い。
あぁー。また子供を襲ってしまった。成人男性だったらすみませんぐらいで済むかもしれないと思っていたが、子供!子供を喰ってしまった!ざ…罪悪感が。孤児院でも我慢出来なくてやっちゃったのに。
男の子を木の根元にそっと下ろして、マントをかける。いや、全部見てしまったが、いちようね。
頭を抱えて、悩む。
どうしよう。それに尽きる。私の頭の中の天使と悪魔が提案してくる。
天使が、正直に罪を認めましょうと清く正しい提案をする。
1、私が、襲ってしまいましたと白状して親御さんに謝る。
悪魔が、罪を見ている人間はいないよと甘くささやいてくる。
2.このままこの子を置き去りにしてトンズラする。
…悪魔の2を選んだら、私、人でなしだな。吸血鬼なのに、またさらに人でなしになっちゃう。
天使が悪魔を蹴り飛ばして、私のやるべき事は決まった。深くため息をついて、男の子をマントで厳重に包み込む。…知らない女に酔っ払っていて、全裸を見られたなんて嫌だよな。私だったら、ビンタして、かかと落としをして見た奴の記憶を飛ばす。
まだ、朝までは時間があるはず。クルクルに包んだ男の子をまたお姫様抱っこして森の奥に進む。
…トンズラしたい気持ちを一割抱えながら。




