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血の他に食べられる物はないかと探していた。人に噛み付くには、人目がありすぎる。朝も昼も夜でさえ一緒。血を流したら必ずシスターが手当てをしてしまう。…血を飲む事の難しさにガッカリしてしまう。
とりあえず死ぬ気はない。喰わなけれ生きていけない。腹と背中がくっついてしまう。足と腕の骨の形がわかってしまう身体に、腹だけが出っ張っている体型に危機感を覚えた。やばい。
昼の太陽の下に出る。暖かく太陽の光を浴びる。
気持ちのいい日。草花が喜ぶように揺れていた。
そして、私は。
日の光が当たった瞬間に、皮膚がただれた。腐った果実のように。どろりと。悲鳴をあげる事さえ出来ず、すぐに逃れた。
息があがり、犬のような忙しない呼吸音が聞こえる。心臓の音が早く…どくどくと鳴っている。
ああ、やはり私は。
夜の生き物だったのだ。夜の暗闇が心地よい。人が恐れる闇の奥に、青さに、静けさに、目が冴えてしまうのか。深い闇の中に入ってみたいと羨望を向けてしまうのか。…入ってしまえば、戻らないだろう。戻る事など考えず闇に沈む。…自分の細胞がそういっている。…そしてたぶん、本能のままに。食欲のおもむくままに。喰うのだろう。
その欲求を踏み止まらせたのは。光をまとい笑顔で、私の名を呼ぶ優しいあの子だ。
私の髪を綺麗だといい、私の顔に笑顔を作らせたいと頬をつまみ、ひっぱる。…私の視線に怯える事なく。ただ、ひたすら鈍感に。喰らいたい私の感情に気づきもしないで。
笑顔で、私に、遊ぼうというのだ。
その善良さに私はどうする事も出来ずに、ただ立ち尽くす。闇にも入れず、光に焼かれて。雲の中に呆然と。どこにも行けずに。
私は、つながれた手を振り払えずに、ひたすら優しい鎖に縛られて、身動きが取れなくなっていた。
あの日までは。




