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その子は、私に近づいてきてしまった。
大丈夫?言葉は、話せるの?絵本は読める?あっ。ぼろぼろだね。でもちょっとでも覚えておくといいかもしれないよ。あっ。書いてみる?シスター。お祈りの言葉を。…あの、でも。おしゃべりしたいな。だってこんなにかわいいのに。
綺麗な髪だね。とかしてあげる。あっ。くし、くし、あった。…ちょっと欠けてる。大丈夫。とかせるよ。あたしの髪でやってみるね。…いたた。あれ、ちょっと引っかかっちゃった。シスター!シスター!とってください〜!
ヨイショ。ほら、着替えようね。ごめんね。あの子たちも悪気があった訳じゃ…無いと思うんだけど。スープをかけるなんて。もう。本当に。ケンカばっかりしてるから。パンの大きさなんてかわりないのに。…いたた。お腹にパンチが入っちゃった。もう。力加減もしないんだから。…まぁ仲直りしたからいいけど。…明日にはまたケンカするんだろうなぁ。あいつらは。
お人好しで、優しくて、甘くて、正しくて、人気者で、よく笑い、よく怒り、誰とでも仲良くなりたいと願う愚かな子。
私の視界に入ってきてしまった。空腹の、私のそばに。飢餓に苦しむ私の手の届いてしまう所に。…生きるという本能のままに、爪を研いでいる私のすぐそばに。
今なら、言える。逃げて。お願い。
私のそばに来ないで。あなたの血を、嗅がせないで。私を化け物にしないで。
いつだって、私の馬鹿げた願いは叶う事は無い。そう、現実はいつだって私に優しくは、してくれないのだ。優しいあの子の仲良くなりたいという願いは、叶う事は無い。
だって、喰べたいのだ。私は、喰べたいのだ。
おぞましく、無作法に、かぶりつきたい。
本能のまま私は、あの子に喰らい付く。




