正式な入り口
赤髪とアオイはアダルトショップの裏に隣接する賞金稼ぎの事務所で話し合っていたが徐々に軽い言い争いのようになる。
「ここで諦めるのか?ビビったのかよ。」
アオイは赤髪に食ってかかる。
惨たらしい殺人現場を目撃して動揺したのは事実で恐怖したのも事実だったが、時間が経つに連れ恐怖もまだ残るが、
アイツ等を野放しにするのは間違っているという思い。
あんな、女、子供を平気で殺すような連中を見逃せないという思い。
アオイにはそんな感情が生まれてくる。
「お前は何だ?、、、警察か?正義の味方か?」
お前の言ってることは賞金稼ぎの仕事からはみ出ていると赤髪はアオイを一蹴する。
赤髪の態度、思考は冷静な大人そのものだった。
損得を勘定し、九龍グループと構えてまで青田郡司を追うのは自殺行為だとアオイに熱弁する。
危険なのはアオイにも届いてはいた。現実も分かっている。
しかし、何かに負けているような気がしてアオイはナカナカ受け入れる事が出来なかった。
その何かが、恐怖なのか、損得なのか、何なのかが自分でも分からず、受け入れられなかった。
アオイはどこにもぶつけられない怒りを紛らわすために、赤髪といる賞金稼ぎの事務所から飛び出て、愛車のカフェレーサーに飛び乗り走らせる。
知り合い、友達の少ない胡蝶アオイは、こんな時に向う場所が限られていた。
二階堂ケイに連絡したが、彼女は多忙で連絡がつかず、
行きつけのラーメンブシドーに行ってみるが、定休日がなく普段はいつも開いている店が今日に限って休みだった。
最後に向かったのが何でも屋の奇妙な店主がいるトラヒスという店だった。
トラビスに到着し店に入ると、いつもいる店主のいつも骨のデザインが目立つ革ジャンを着ている工藤十字は留守で、その代わりに鳥口という男が留守番をしていた。
この鳥口という男の初対面でも馴れ馴れしい態度にアオイは我慢が出来ず、
自分の家に帰る事も考えたが、結局、愛機のカフェレーサーにまたがり、赤髪のいる賞金稼ぎの事務所に戻る事にした。
あちこち回ったおかげで少し頭も冷えたし、もう少し話し合ってみるべきかと思いもした。
バイクを走らせ、賞金稼ぎの事務所とアダルトショップが入る雑居ピルに到着すると、アオイは異変に気付く。
いつも裸の女のポリグラフが踊るアダルトショップの看板が消え、CLOSEのネオンが光っている。
バイクを停め、入り口の繋がるアダルトショップのドアを開けようとしたがロックされていてひらかなかった。
仕方なくアオイは普段は使わない、賞金稼ぎの事務所の正式な玄関から入るために、ピルの裏側に回ることにした。
「とうとう借金取りに目をつけられたか?」
面倒くさそうに、事務所の正式な玄関ドアから入り、事務所の入り口のドアを開ける。
戦慄が走る。
ドアを開けてアオイの目に飛び込んできたのは、獣に襲われ喉笛を引きちぎられ、腸を食い破られ、脳天に太い針が刺さったように穴開いた
肉片になった赤髪の死体だった。
血みどろの事務所をアオイは肉の塊の赤髪に近づく。
ゆっくりと近づいていく。
すると、ドンとアダルトショップと繋がるいつも使う、ドア、入り口が。
飛び出てきた真っ黒なドーベルマンの毒針の尻尾が凄いスピードでアオイの心臓めがけて飛んでくる。
そして、ニ撃目は鋭い牙が喉笛めがけて襲いかかる。
アオイは咄嗟に腕で喉笛をかばい、ドーベルマンはアオイの右腕を真っ白なライダースの革の上から噛みつく結果になる。
アオイのいつも着ている真っ白なライダースは 護身用で防刃仕様になっていてドーベルマンの毒針も鋭い牙も貫通することはなかった。
アオイは防刃の腕に噛み付き、暴れるドーベルマンともみ合いながら、左手でなんとかシングルアーミーの改造銃 護身テイザーガンを抜き、至近距離から電撃針の弾丸を狂犬に打ち込む。
狂犬ドーベルマンは完全に感電し痙攣して身動き不能に。
アオイは尻もちで這いずりながら狂犬と距離を取ると、連続でもう二発、弾丸を撃ちこむ。
汗なのか、涙なのか、鼻水なのか、顔面を拭うとアオイはなんとか立ち上がることができた。
そして震えながら痙攣の激しいドーベルマンを見つめる。
「オイ!」
ドアを背にして立つアオイ突然かけられた背後からの声に振り返ると
顔面に霧吹きで水をかけられたように
ちょうど悪役プロレスラーが口から毒霧を発射するように
背後にいた男の口からの毒霧に顔面が襲われる。
アオイの顔面に吹きかけられた液体は一瞬で視界を奪い、膝から崩れ落ち、気絶してしまう。
気絶した若い女の賞金稼ぎの足元には
山高帽を被り、黒いスーツをきて、妙に肌の白い男が薄ら笑いを浮かべて立っていた。
この騒動、殺人は誰にも知られることはない。この後、賞金稼ぎの事務所、アダルトショップには死体どころか誰一人の痕跡もなくなっていた。




