第5話
いつものようにシャワーを浴び、浴槽に身をあずけて、頭の中でパズルを組み立てる。
いくつかの断片的な情報が浮かぶが、その輪郭はあやふやで、いくらでも組み替えはできた。
それぞれを偶然やノイズと切り捨てるのは簡単だが、意味がない。
偶然も重なれば必然となり、やがて明確な形をとって、「証拠」になる。
証拠を待つ余裕は、今の私にはない。
そもそも、個人レベルで証拠を集めたところで、組織に勝る警察を出し抜くことは不可能だ。
逆に言うなら、情報が証拠の形をとる前に可能性をつぶすしかない。
警察に間違いは許されないが、私にはそんな制約はない。
それこそが警察を出し抜く唯一のチャンス。
間違いだったらやり直せばいい。
これこそが国家権力に勝る、唯一のポイント。
私は間違えたからといって謝る必要すらないのだから。
ベッドサイドに腰掛けて、グラスに満たしたミルクを一口含む。
間違えるのはかまわないが、行動を起こすと言うこと自体、リスクを冒すことになる。
それは少ないほどいい。
ただでさえ、次で「2回目」になるのだから。
ミルクをもう一口。
職域なら、なまじな近所よりも土地勘があるかもしれない。
場当たり的な犯行だとしても、警察の所轄署が違えば捜査は錯綜し、自分の安全性は増す。
その程度の計算はあってもいい。
移動手段は、完全に決めつけることもできないが、完全否定もできない。
可能性は可能性のうちに、証拠となる前につぶす。
ただそれだけ。
私は残りのミルクを飲み干すとグラスをテーブルに戻し、手元のスイッチで部屋の明かりを落とした。
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