骸は二度嗤う
天蓋のシャンデリアは星屑のシャワーだ。
ダイヤの様に煌めく灯りが天空を支配している。
地上では民族衣装に身を包んだ踊り子たちが弦楽四重奏に合わせて華麗に舞い、薔薇の花の如き芳醇な香気が満ちている。
舞踏会会場はさながらこの世の楽園だった。
「緊張しなくていいのですよ? レイモン」
恐れ多くも隣に女王アリシャ殿下がお見えになる。
私はサッと膝を着いて頭を下げた。
「女王陛下におかれましては……。いや、私も招待客と言う扱いでしたね。お見苦しい所をご容赦ください」
私が立ち上がると陛下はまくし立てる様に言葉を紡がれた。
黒曜石の瞳が私を捉えて離さない。
「流石は我がロードリアの魔導士ですこと。先の大戦では敵の首魁を仕留めたと言うではありませんか。あの大国ガランの魔攻師団を一人で壊滅させたという……」
「少し話が大きくなっています。陛下、私が敵将を倒せたのは仲間のおかげです。彼等が一対一で戦える状況を作ってくれたからこそ、私達は勝てたのです」
冷や汗が背中をつたう。
だが、陛下の誤解を解く事が出来たのは僥倖であった。
「そう言ってくれると思いましたよ? レイモン……」
不意に羅紗の様な黒髪が私の手首を掠めると、陛下から異様な瘴気が漏れ出てきた。
不審に思い周囲を見回す!
なんとそこには私達二人以外に誰もいないではないか。
「貴様! 陛下ではないな! 何者だ」
「お前が良くご存じのはずだぜ? ロードリア魔導士団長アーネスト・レイモン殿?」
麗しの女王陛下の見目形はとうになく、そこにあるのは醜悪な髑髏の化け物だった。
思わず飛びのいて距離を取れば、部屋はおぞましい血と肉塊で覆われていた。
凄まじい腐臭である。
「料理を口にしていたら私はあの世行きだったな」
思わぬ苦境に強がりを口にすれば、スカルが嘲ろうした。
「大丈夫。楽には殺さない。二度も同じ相手に不覚は取らぬよ?」
背筋が凍り付いた。
敵はアンデッドになって蘇ったのだ。
凄まじい殺気を振りまくスカルは青龍刀を下段に構えた。
「どうやって私をこの檻に捕まえたんだ?」
「どうって……。君がやったのと同じだよ? 部下に兵力を削ってもらったのさ」
「君にはもう部下何ていない! 全滅した筈だ……」
スカルは、いやスカルたちの嘲笑が聞こえた。
慌ててガラス窓を覗き込むとそこには無数のゾンビの群れが蠢いている
「君たちも全滅するのさ……」
頸部に焼けつくような鈍い痛みが走る。
刹那、血しぶきと共に首のない私の体が、その場で崩れ落ちるのを見た。
そしてそのまま私の意識は途切れて消え去ってしまった。




