願いを叶える仕事
いつものごとくストレスがマックスだったので、裏山で獅子の咆哮を叫んだ。
「俺は神だ! 俺は神だ! 俺は神だ!」
三回言うのがコツだ。神に祈るくらいなら、自分が神になったほうがいい。
だって、王都のカジノで素寒貧にされたのだ。イカサマをやられて憔悴しきっていたのだ。
信者と書いて儲ける。いっそ自分が、教祖になって新宗教創始するかと息巻いたその瞬間だった。
蒼い空から、白いヒゲがモジャモジャのお爺さんが、ふわりふわりと舞い降りたのだ。
「青年よ。ワシこそ、真の神だ。罰当たりめ」
驚嘆した。何故なら、鷲の如き巨大な翼が背中からせり出していたのだから。
「ええ!? 神も、頭髪はお亡くなりになるの?」
「甘い! これは、カツラだ」
「!!」
「フフ、浅慮、浅慮。そんなだから、ハートのエースを抜かれたのだ」
ガクンと膝から崩れ落ちてしまった。止めどなく涙が溢れて来る。
「コレコレ泣くな。みっともない。良し、ワシがどんな願い事でも一つだけ、叶えてやろう」
「ホントか? 一生使い切れない財産とか、可愛い女の子とか、何でもか?」
「そうじゃ、その代わりに、ワシの頼みも聞いてくれんかの」
「マジかよ!!」
俺は、考えた。考えに考え抜いた。
金か、女か、権力か。
どれを選んでも一生遊んで暮らしたい。
……いや。
もっといい願いがある。
俺は、神を名乗る老人に、こう頼んだ。
「いくつでも願いを叶えられるようにしてくれ! な? いいだろ」
老人は、ニンマリと笑っている。
満面の笑みだ。
実にほくそ笑んでいた。
「そうかい?」
神は目を細めた。
「今、それは叶った」
「ようし! じゃあ……」
「それは、次に願いを叶える人間が、だな」
「それは、どういう……」
俺が、狼狽えていると彼は、古ぼけたランプを取り出し、何事かを唱えた。
するとどうだろう。
あれよあれよという間に、それに吸い込まれて行くではないか。
「やれやれ、強欲な人間どもの相手は、ほとほと疲れたわい」
私は声を上げることが出来なかった。
声ならぬ声は、闇に溶けたのだ。
それに対して老人の声が、梵鐘の響くように、頭の中に反響する。
「お前に、二代目を頼みたかったのだが。ちと役不足のようじゃな。他者の願いを叶えてゆけ。そうすれば、解放されることが有るかもしれん。ではな」
ゆっくりと、意識が混濁してゆく。
頼む、これは悪い夢であってくれ。
そう強く願った時、暗闇の中で俺の意識は途切れた。




