ラーの一族
セクハラは極刑。
パワハラは流刑。
アルハラは下手すれば終身刑。
荒れ狂うは、現在の魔女狩り「ザ・コンプライアンス」!
それは増え続ける「ラーの一族」。
社会を練り歩く八十以上のエレクトリカルパレード!
つい先日のことだ。
私は、法務課の聴聞会に召喚され、非難の的となった。
「『オカハラ』だな。君、分かるかね?」
耳慣れない言葉だ。
疑問符の奔流に呑み込まれ、思わず聞き返す。
「『オカルトハラスメント』ということですか?」
そう言うことであれば、思い当たる節はある。
『SSSレア来い!』と十字を切ってガチャを回す癖には心当たりがあった。
通報はされなくとも、社会人にあるまじき行為なのではなかろうか。
パイプ椅子を背に、深く項垂れてしまった。
「お菓子ハラスメントだ。女性陣は皆ダイエット中だったのだぞ?
アンパンを頬張りながら、北海道銘菓を食す……。少しは遠慮したらどうかね?」
何という理不尽だろうか。
甘党の男だっているのだ。
偏食は反省している。
懐かしい曲が、不意に私をメランコリックにしたのだ。
煤けた天井を見上げ、右手で眼を覆った。
老人たちの非難の言葉が脳髄を揺さぶり続ける。
かつて配属初日の研修で、
『君たちはまず足音を消して歩け』
と言われた理不尽が脳裏を過ぎった。
私は、たまらず虚空へと叫んだのだ。
「色即是空空即是色!!」
居並ぶ査問者たちの眼が点になっていた。
構わず続けた。
「テレパシーを使えという事ですね! 新しいタイプの人類になれってことだ」
己の五体が、悟りに震え、法悦に悶えた。
魂に力が漲ってゆく。
だが――
「もういい帰り給え。君は少し休憩が必要なようだ」
般若の如き面をした査問委員たちが、皆青い顔をして震えていた。
気づけばトロイメライが鳴り響いている。
古ぼけたガラスドアを押し開けて、私は夕焼けの空に向け、階下へ走り出していた。
一体、次はどんなハラスメントが、この世界に生まれ落ちているのだろうか?
いや、そうではなく、それは単に可視化されるだけなのだろうか?
地上に出て、昼食の残りを平らげると、私は考えるのを止めた。




