ダジャレが世界を滅ぼす日
「サメだけにジョーズ。なんちって」
ベタつく汗が、瞬く間に凍てついてゆく。
寒い。
一瞬で酷暑は、永遠の冬に塗り替えられた。
召喚獣ニャルムお得意のダジャレは、げに凄まじき呪いである。
「冷やしすぎだ! お主! 春か秋にせよ」
「それは、ないものねだりというものだニャ」
「永久凍土にする気か? 俺達の居城を!」
掴み上げた黒猫を、凍りついたバルコニーで揺さぶった。
こちらは必死だ。
するとどうだろう。
神獣はなにやらブツブツと呪言を唱え、言い放った。
「薄暗がりの頼りない道を歩く我らよ。それでも人生に朝は来る」
閃光が夜空を駆けた。
轟く雷鳴に思わず耳を塞ぎかける。
すると凄まじい熱波が、白亜の城を覆い尽くしたではないか。
「アツい! アツい! ニャルム殿! どうして加減が出来ぬのだ!」
「春のカツオ、あるいは秋のサンマはあんまり好きではないニャ! 君もそう思うでしょ?」
「魚の好みで季節が決まるのか! それこそ勝手というもの!」
頭上の猫と睨み合いを続けた。
感情を抑えつけられない。
彼を揺さぶり続けていると、誰かが私の肩を小さく叩くのに気づいた。
「えー。コホン。一つ訂正。
お魚ではなくてですね~。
私が、遠泳と犬ぞりにハマってるからなんだな~」
振り返れば、赤いおさげの聖女ルミナ様がいらっしゃった。
バツの悪そうな顔をしておいでであった。
昨今の異常気象の原因に得心がいき、私は呵々大笑した。




