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金と銀と、白銀の乙女

「貴方が落としたのは、金の聖女様? それとも――」


「両方、頂けぬか。ファルクレア殿」


 天空の泉で即答すれば、かの白馬は憮然とした表情を浮かべていた。


 おかしい。決まりきった答えではないか。


 不気味な沈黙が辺りを支配している。白樺の森を、カラスたちが縫うように飛び去っていった。


「強欲ね。何も落としていないのに」


「失うものがないでござろう? 言ってみるものよ」


 神獣は、よほど可笑しかったと見える。腹を抱えて笑っていた。


「冗談は、顔だけにしてほしいわ、ゼファー。貴方、結構本気だったじゃない」


「いつも本気でござるよ。ルミナ様のことなら、なおのこと」


 作務衣を脱ぎ、上半身に筋肉を浮かび上がらせると、腹筋はものの見事に六個に割れている。


「ところでね、私、銀の聖女様とは、一言も言ってないのよね」


「ならば、プラチナの聖女様でござるな」


 かの馬は、目が点になっている。


 おかしい。ここは報酬が上がるところだ。


 だというのに、心なしかフォルクレアの眼に怒りの色が滲んでいた。瞬く間に空を黒い雲が覆い、稲光が頭上を掠めたではないか。


「白銀のフォルクレアだ! おるだろーが! ここにも乙女が!」


「馬でござろう……。圧倒的に、馬でござろう。白銀かもしれんが」


 首をすくめる。


 おどけて、その場から逃げ切ろうとしたが、甘かったのだ。


「そう、だから貴方も馬になればいい。ね? 素敵でしょう?」


 私が刀を抜くより速く、いや、ずっと速かった。


 正に一瞬のことである。


 振り向きざまに後ろ脚で、したたかに泉の方へ蹴り飛ばされたのだ。


 豪快な水しぶきを上げて、私は水底の方へと沈んでいく。


 そして、薄れゆく意識の中、とても愛しい人が、ファルクレアに何かを訊ねる声が聞こえた気がしたのだった。

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