死神のカードは茶番を嗤う
「結論の決まりきった裁判など茶番です」
赤いドレスに身を包んだ妹は、酷く感情的だ。
「一種のお葬式だよ。形式は大事さ」
ワイングラスをテーブルに置き、酔いの回った彼女を宥める。
美しい黒髪を手で梳きながら、尚も不満げに口を結ぶ。
「……お兄様は良い御身分ですこと。手品はそんなにもうかるのかしら」
その声は甘やかで、しかし目はまったく笑っていない。
「僕のことはよせ。あいつは自業自得だ」
カードをサッと広げて素早く切った。
妹に好きなカードを選ばせる。
気取られぬように、僅かな折り目を付けてさらに混ぜた。
彼女は迷いなく一枚を抜き取る。
その指先は、折り目の位置を正確になぞっていた。
「……死神のカード。ですから、これが茶番だといっているのです」
「そうだ、あいつの極刑は決まっている。不敬罪なんだからな!」
私は膝から崩れ落ちる。
サロンの床石は酷く冷たい。
彼女がくぐもった声で話しかけた。
「何か勘違いされてません? お兄様。王太子殿下は、そこまで狭量ではありません」
「どういうことだ? アレクスは極刑だと殿下ご自身が……」
「瞼に目を書き込まれたぐらいで……。王室典範の最高刑は断酒です」
死刑に等しい量刑だろう。
酒好きの愚弟には。
殿下の不興を買ったのは間違いない。
「殿下ご自身が裁判長をやるおつもりなのですよ? これが茶番以外の何だと?」
「……殿下は、またアレクスと仲良くやりたいんだと思う」
溜息にも似た言葉が口をついて出た。
妹は目を丸くしている。
「――な、何を」
そこから先は言葉にならないようだった。
構わず続ける。
「時間が必要なんだよ。振り上げた拳を、下すための時間が」
そう言って、私はグラスを傾けた。
甘い香りが、ひどく苦く感じられた。




