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ノック
ゾンビ達が妹に飛びかかった瞬間、非常階段に向かって駆けだした。
あの子は助からない。
頭の中をサイレンが反響する。
逃げるしかない。
たった一瞬で頭と胴体が切り離されたのだから。
廊下灯の僅かな灯りを一直線に駆け抜ければ、窓は悉く割れて硝子の雨を降らす。
堪らずジャンパーを頭巾にかがんでみると、土気色の死者たちが髪を振り乱して這いよって来た。
目と鼻の先にあった消火器の線を抜き、レバーを強く握って噴射する。
奴らがたじろいだ一瞬を見逃さない。
裏拳で防犯ベルを乱打し吹き抜けを飛び降りる。
果たして闇夜の住人達は玄関に先回りしていた。
彼等が捕食せんと私の手足を掴んだ正にその瞬間、私は一面に火を放ちサナトリウムを炎の海にした。
ゾンビハンターになる決意をした夜の話だ。
私は好奇心から妹を失ったばかりか、全身の皮膚を六割近くも焼いたのだ。
私も夜の住人となった。
とても日中は歩けない。
だがそれも、彼女を見捨てた罰かもしれない。
私は今もあの火の中で燃え続けている。
そして夜になると、玄関の外から小さくノックの音がする。
私は、決して扉を開けない。




