診断結果F
各種数値は、もはや正常値を逸脱していた。
パラメータは無慈悲な変異を告げ、私という機体は悲鳴をあげていた。
健康診断の結果が届く。
封筒を開く手が震える。
そこには、直視に耐えない現実があった。
セサミンが必要だ。
塩分は臨界点を越え、血圧計はもはや機能停止寸前。
酢の物が必要だ。
糖分は洪水の如く全身を巡り、血糖値はグラフの外へと消えていた。
そして――
体重は三桁に迫っていた。
ベルトの穴を増やす作業を途中でやめた。
いや、やめるしかなかった。増やす場所がもう、なかったのだ。
この体は酸化しきっている。
水素水の福音はかすみ、私は原始の宇宙をさまよう漂流物となった。
「ああ、僕たちは一つだったんだね」
そんなポエムが喉元まで出かけたそのとき、
頭蓋の奥で警報が鳴る。
脳梗塞の影が、脳内に張りつく。
ドロドロの血液は、心筋梗塞の導火線に火をつけていた。
その日は燎原の如く、沈黙していた身体の奥を焼き尽くしていく。
ポリフェノールは、とうにこの船から逃げ出していた。
診断結果はオール・アスタリスク。
粉雪のように舞う注意書き。
最後に突きつけられた評価は、ただ一文字の『F』。
容赦なき審判。
胴体着陸の試みも、もはや無意味だった。
私のフライトは、静かに天国へのカウントダウンを始めていた。
その瞬間、
稲妻のような閃光が視界を裂いた。
目を覚ませば、こたつの上に突っ伏しているではないか。
手元のスマホには、ここ数日の体重が几帳面に記録されている。
手が震える。
画面をみつめたまま、私は理解した。
これは、無理なダイエットによる――低血糖発作だったのだ。




