14/24
終点のカボチャ男
タンポポの綿毛が、ふわり、風に乗って舞い上がる。
見上げれば、黄金色に染まる空に、燕たちが小さなワルツを描いていた。
琥珀色の空気が、胸の奥まで染み渡っていく。
このまま、まどろみの世界へ溶けてしまえたら――
その時、視界にぐっと何かが割り込んだ。
カボチャのマスクを被った男が、すぐ目の前にいた。
腹に響くような低い声が、鼓膜を揺らす。
「……お客さん、お代が足りないよ。起きて、起きて」
瞼をこすりながら身を起こすと、視界がぐらりと揺れた。
ここは――バスの中だ。
窓の外では、夕陽が田んぼを朱く染めていた。
現実のはずなのに、どこか夢の続きのように感じられた。
「小銭でもいいからだしてくれないと。ここ、終点だよ」
さっきの男――いや、運転手のおじさんの顔が、カボチャのマスクの影からにじみ出るように現れた。
突かれたような、それでもどこか穏やかな笑みを浮かべている。
私は慌ててカバンを探り、小銭入れをまさぐる。
指先に触れたのは、見覚えのない金色のコインだった。
どこで手に入れたんだろう……?
「……これで、足りますか?」
おじさんはそれを見て、ふっと目を細めた。
「ふうん。見えたんだね。――なら、もう戻れないよ」
ギイ、と重たく開くバスのドア。
その向こうには、あの風景が広がっていた。




