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終点のカボチャ男

タンポポの綿毛が、ふわり、風に乗って舞い上がる。

見上げれば、黄金色に染まる空に、燕たちが小さなワルツを描いていた。


琥珀色の空気が、胸の奥まで染み渡っていく。

このまま、まどろみの世界へ溶けてしまえたら――


その時、視界にぐっと何かが割り込んだ。


カボチャのマスクを被った男が、すぐ目の前にいた。

腹に響くような低い声が、鼓膜を揺らす。


「……お客さん、お代が足りないよ。起きて、起きて」


瞼をこすりながら身を起こすと、視界がぐらりと揺れた。


ここは――バスの中だ。

窓の外では、夕陽が田んぼを朱く染めていた。


現実のはずなのに、どこか夢の続きのように感じられた。


「小銭でもいいからだしてくれないと。ここ、終点だよ」


さっきの男――いや、運転手のおじさんの顔が、カボチャのマスクの影からにじみ出るように現れた。

突かれたような、それでもどこか穏やかな笑みを浮かべている。


私は慌ててカバンを探り、小銭入れをまさぐる。


指先に触れたのは、見覚えのない金色のコインだった。

どこで手に入れたんだろう……?


「……これで、足りますか?」


おじさんはそれを見て、ふっと目を細めた。


「ふうん。見えたんだね。――なら、もう戻れないよ」


ギイ、と重たく開くバスのドア。


その向こうには、あの風景が広がっていた。

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